ドローンベンチャーのナイルワークスと住友商事などが10月29日、農業用ドローンを手軽に導入できるシェアリングサービスを確立したと発表した。
ドローンを農家にリースもしくは販売し、ドローンの運用に必要な大量のバッテリーは産地でシェアすることで、ドローン普及の最大のネックだった初期費用を大幅に引き下げる。2020年以降、東北地方のコメどころを手始めに、大型のJA(農業協同組合)や農業生産法人に向けてサービスを展開していく。
日本では就農者の高齢化に歯止めがかからず、若い担い手の不足も深刻化している。農作業の効率化が急務になっており、ドローンの活躍が期待されている。ナイルワークスが開発した農業用ドローン「T-19」はタブレット端末で操作する。センチメートル単位での機体制御と自動飛行が可能で、高精度な農薬散布と作物の生育診断ができる。

価格は、機体の他に必要な基地局や測量機などを含めたセットで、500万~600万円。「30ヘクタール以上の農地を持つ農家であれば購入してもペイする」(住友商事)というが、導入のハードルを下げるためリースも実施する。さらに20年には、様々な種類の農薬を散布できるように改良し、セット価格を500万円未満に抑えたモデルの発売も予定している。
導入のもう1つのネックは、ドローンの飛行に使う大量のバッテリーだ。T-19は1個数万円のリチウムイオンバッテリーを2個搭載する。およそ15分飛行でき、1ヘクタールの農地に農薬を散布できる。農地が30ヘクタールなら、60個のバッテリーが必要になる。
住友商事は、バッテリーを保管・充電する施設を主要産地ごとに設けて、周辺地域のドローン利用者に貸し出すサービスを立ち上げる。バッテリーをシェアすることで、ドローン導入のコストを大幅に引き下げられる。
住友商事とナイルワークスは、JAみやぎ登米とサービス立ち上げに向けて18年から連携してきた。今年8月には、高等学校の空き施設を利用して、バッテリーの保管・充電をする「スマート農業センター登米」(下の写真)を立ち上げ、周辺地域でのシェアリングの仕組みを確立した。

これまでドローンを産業利用する上で様々な規制が足かせになってきたが、政府は22年度までに水稲・小麦・大豆などの土地利用型作物の作付面積のおよそ半分に当たる100万ヘクタールで、ドローンによる農薬散布を実施することを目指し、今年7月は、航空法と農薬取締法に基づく規制を緩和した。
飛行する農地の周辺に立入管理区画を設けて人や車両に対して注意喚起すれば、操縦者とは別に監視などを担う補助者を配置しなくて済むようにした。さらに、ドローンで農薬を散布する際に必要な行政手続きも簡素化した。
農薬だけでなく、肥料の散布や種まき、受粉作業や収穫物の運搬などにもドローンの活用が期待されており、そのための技術開発が各方面で進められている。
11月4日に閉幕した東京モーターショーでは、ダイハツが農業用ドローンの基地機能を持つ次世代軽トラックを発表するなど、普及に向けた技術開発のすそ野が広がっている。ナイルワークス以外にも、複数のベンチャーが農業用ドローン事業に参入しており、20年は「普及元年」になる可能性が高い。
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