「売り推奨のリポートを書くのは構わないが、ミーティングでしっかり説明させてほしかった」

 こう残念がるのはペプチドリームの岩田俊幸IR広報部長だ。

 きっかけは米国の調査投資会社マディ・ウォーターズ・キャピタルが11月7日に発表したリポート。ペプチドリームの株式を空売りしていることを宣言したうえで、成長性に疑問を示す内容だった。動画投稿サイト「ユーチューブ」を使って動画も流し、同日のペプチドリーム株の終値は前日比4%ほど下落した。マディ・ウォーターズは2016年に日本電産に空売りを仕掛けたことでも知られる。

マディ・ウォーターズが投稿した動画画面(ユーチューブより)
マディ・ウォーターズが投稿した動画画面(ユーチューブより)
 

 ペプチドリームは東京大学発の技術を基に06年に創業したバイオベンチャーで、13年に東証マザーズに上場、現在は東証1部に上場している。株式時価総額は6000億円を超え、国内のバイオベンチャーとしてはトップの企業価値がある。

 ペプチドという新しいタイプの分子に着目し、その創薬基盤技術を確立。国内外の製薬企業などと共同研究開発や技術ライセンスの契約を締結し、創薬の早期段階から収益を確保して事業を進展させてきた。このため、研究開発投資が先行するバイオベンチャーとしては珍しく、上場当初から黒字を続けており、直近の19年6月期は売上高72億1600万円、営業利益35億7900万円、当期純利益も27億7000万円に達する。

 ところがこのペプチドリームに対し、マディ・ウォーターズは「ペプチドリームの開発プロジェクトで臨床試験まで進んだ例はほとんどない」「(共同研究開発先が19社と公表しているのに対し)一覧から抹消せずに掲載しているだけではないか」「(101本の研究開発プログラムを公表しているのに対し)休止状態や消滅しているものが多数あるのではないか」などと指摘した。

 これに対して岩田部長は、「いずれも投資家からよく質問されることばかり。1時間のミーティングで説明すると、そうではないことを理解してもらえる」と口にする。

 ペプチドリームの出発点は、標的に結合するペプチドの候補化合物をスピーディーかつ大量に見つけ出してくる技術だ。この技術を用いて医薬品の候補化合物の大元となる「ヒット化合物」を見つけ出し、そのヒット化合物をより薬としての性能が高まるように改変して、開発を進める対象となる「リード化合物」にする。その際に、共同研究開発相手から一時金や研究開発支援金を得るほか、ヒット化合物が決まればいくら、リード化合物が決まればいくら、さらに動物実験が行える段階まで進めばいくら、臨床試験が始まればいくらと、開発の進展に応じてマイルストーン収入を得るというのがペプチドリームのビジネスモデルだ。

 ただ、これまでのところ実際に臨床試験まで進んだのは米ブリストル・マイヤーズスクイブとの案件のみ。リード化合物が決まったり、動物実験まで進んだりしたとして公表している案件はいくつかあるが、全ての会社との案件で結果が出ているわけではない。岩田部長は、「提携先が19社もあれば、(当社への期待に)温度差があるのは確かだろう。ただ、相手から契約を終了してほしいと言ってくれば公表対象から外すが、そうでないところは残している」と説明する。また、101のプログラムについても、「この半年の間に実際に提携先とやり取りがあったものだ。休止状態や消滅したものは含めていない」と、マディ・ウォーターズの指摘を否定する。