岐阜県大垣市に本店がある大垣共立銀行で26年間頭取を務め、昨年から代表取締役会長の座に就いていた土屋嶢(つちや・たかし)氏が4日、急性呼吸不全のため74歳で死去した。新型コロナウイルスに感染し入院していたという。

土屋氏は当時としては最年少の46歳で地銀頭取に就任。その後、手のひら静脈認証ATMや、有人店舗の年中無休化を日本で初めて導入するなど、地銀界の風雲児、アイデアマンとして大垣共立の名前を全国に知らしめた。その口癖は「おれらはサービス業だから」だった。
女性行員45人で「OKB45」
「なんで銀行がやっちゃだめなの?」。大垣共立銀をしばしば取材していた2000年代中ごろ。斬新なアイデアを次々と打ち出す土屋氏に「銀行なのにそんなことやっていいんですか」と聞くと、いつもニヤリとしながらこう問い返された。
「海外の空港に降り立ってさ、リムジンで迎えが来ていたらどう?」と聞かれ「そりゃあVIP気分でうれしくなりますよね」と答えたら、本当にプラチナ総合口座の会員向けに、駐在員事務所がある香港、上海、ニューヨークの空港でリムジンお迎えサービスを実施することに。
世の中でAKB48がヒットすると、自らがプロデューサーとなり女性行員45人で「OKB(大垣共立銀行の略)45」を立ち上げ、広報宣伝に活用した。ちなみにOKB45のデビュー曲は土屋氏自らが作詞した「OKB音頭」だ。

ほかにも1000万円以上の住宅ローン契約者の中から、抽選で1000万円をプレゼントしたり、ATMにスロットマシンの機能をつけて数字がそろうとATM利用手数料が無料になったり。さらにゴールド総合口座を持つ顧客専用のATMをその名の通り金色にし、現金を入れる封筒まで金色にしてみたことも。その発想力は「とても思いつかないしまねできない」(三菱UFJ銀行幹部)と他の金融機関を何度も嘆息させてきた。
離婚専用ローンやシングルマザー応援ローンも
ただ奇抜なだけではない。時代の先も見据えていた。カードなしで現金を引き出せる生体認証や365日無休で窓口が稼働する有人店舗。これも日本の銀行で最初に始めたのは大垣共立だ。生体認証は東日本大震災で通帳もカードも失った預金者が途方に暮れているのを見て導入した。
支店のない田舎をバスで巡回する移動店舗にも積極的で、裁判費用などに充てられる離婚専用ローンや一人で子育てに追われる女性向けのシングルマザー応援ローンも取り扱う。
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