(写真:ユニフォトプレス)
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 日本の産業界では「円高=悪、円安=善」という考えが定着している。円安になれば企業による輸出が増え、業績が改善し、雇用が増えるという好循環に結び付くと考えられているからだ。そのため、為替が少しでも円高に振れると企業業績には悲観的なムードが漂う。来週から本格化する2020年3月期の中間決算では、7月以降、1ドル=110円台を割り込んだ為替相場の影響を受け、業績見通しを下方修正する企業が相次ぎそうだ。

 夏以降、米中貿易摩擦が激化し、世界経済の減速懸念が高まるにつれて「有事の円買い」が進んだ。これは主に、金利の低い円を借りて、それを別の通貨に換えて運用している投資家たちが逆の動きに出る(取引を清算する)ことに起因する現象である。7月、米国が10年半ぶりに政策金利を引き下げたことも、円高の引き金となった。

 それだけに、10月30日に米国が今年3度目の利下げを発表すると、さらに円高が進むのではないかとの見方が市場には少なからずあった。そして、円高を是正すべく日本銀行が10月31日の金融政策決定会合で利下げに踏み切る──。そんなシナリオすら存在していた。だが蓋を開けてみると、心配は杞憂(きゆう)に終わった。米国が利下げしても円高は進まなかったし、日銀は将来の利下げの可能性を明示しつつも、追加緩和のカードを切らなかった。

 「米国が先手を打って予防的に利下げしたことが、かえって2020年以降の金利据え置きの予想を強くした」。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは円高が進まなかった理由をこう分析する。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が先行きの金利政策に関し「適切に見極める」と、利下げ打ち止めをにじませた点も、これ以上の円高進行を阻止する要因になったといえる。利下げの打ち止めは米長期金利の上昇につながりやすく、円安になりやすいからだ。

 このほど出そろった、生命保険各社の2019年度下期運用方針でも、こうした「円高は進みにくい」という見方を裏付ける動きが出てきている。為替変動に伴う損失を回避(ヘッジ)しない、「オープン外債」の投資を増やすところが増えているからだ。

 例えば日本生命保険は、ヘッジ付きの外債で運用していたものをヘッジなしに変える方針だ。長引く国内の低金利環境に加え、欧米の金利も低下している。ヘッジコストを払って外債に投資すると費用控除後の利回りが低下するため、為替リスクを負ってでもオープン外債で利回りを確保したいとする思惑も働いている。

 オープン外債に投資する場合、外貨を調達する必要があるので、円を売ってドルを買う、すなわち円安につながる動きとなりやすい。オープン外債の投資拡大は、生保のみならず国内最大級の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も表明したばかり。こうした機関投資家の円売りの動きが、円高に進みにくい要因となる可能性はありそうだ。

 決算会見では、多くの企業経営者が円高を理由に悲観的な経済見通しを披露することが予想される。だが意外にも大幅な円高リスクは遠ざかっているのかもしれない。

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