17年に提携を発表した日立オートモティブシステムズの関秀明社長(当時、左)とホンダの八郷隆弘社長(写真:共同通信)
17年に提携を発表した日立オートモティブシステムズの関秀明社長(当時、左)とホンダの八郷隆弘社長(写真:共同通信)
 

 「ショーワと日信工業」「ケーヒンとエレシス」。こうしたホンダ系部品メーカーの組み合わせは10年以上前からささやかれていた。エレシスとは今や日本電産傘下に入った元ホンダ系の電子部品メーカー、旧ホンダエレシスのこと。ホンダ系部品各社の統合や再編はいつかは必ず起こると予想されていたが、電子部品をデンソーに集約するなど戦略的に再編を進めるトヨタグループと比べ出遅れ感があった。

 そんな外部の想像を飛び越えたのが、日立製作所傘下の日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業の経営統合だった。日立とホンダは30日、部品メーカー4社の経営統合を発表。デンソー、アイシン精機に次ぐ売上高で国内3位の自動車部品メーカーが誕生することになる。

 日立の自動車関連事業は日産自動車を主力としていた部品メーカーを取り込んできた経緯がある。現在の日立オートモティブは日産向けが事業の約3割で、2番手のSUBARUの同10%を大きく引き離す。そこにホンダ系のエンジン関連に強いケーヒン、ステアリングやショックアブソーバーのショーワ、ブレーキの日信工業が加わる。

 統合による新会社「日立オートモティブシステムズ(仮)」は日産とホンダの受注が取りやすい体制となる。ホンダの世界販売台数は500万台超。日産は約550万台。両社を合わせれば約1000万台のトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)に匹敵し、そこに約2000万台ホンダの二輪が加わる。ホンダの20年3月期の研究開発費は8600億円。日産自動車は同5500億円。単独ではトヨタ自動車の1兆1000億円に及ばないが、両社を合わせれば相応の規模になる。

 自動車業界を襲うCASE(つながる・自動運転・シェアリング・電動化)の波。部品メーカーにとっては一段と厳しい状況となっているのは確かだ。系列の最も重要なメーカーをどう生き残らせるか。独立自尊を進んできたホンダが選んだのは、日立という大樹に寄りそうという方法だった。

 ホンダは伊東孝紳前社長の体制でいわゆる「ケイレツ」に頼らず、欧州のメガサプライヤーからの部品調達に踏み切ったとされる。しかし、ホンダの強みであった「擦り合わせ」ではメガサプライヤーの採用があだになりかねない。

 電動パーキングブレーキの品質問題で生産停止、発売遅れに追い込まれた新型「N-WGN」や「フィット」で問題となった部品は欧州系のサプライヤーからの調達だ。機械的な部分だけでなくソフトウエアでも擦り合わせが求められるが、外から見えないだけに難しい。日信工業も電動パーキングブレーキを開発しているが、今回の東京モーターショーの展示は「開発中」だ。

 デンソーやアイシン精機といったトヨタ系以外の日本発メガサプライヤーとして、独ボッシュや独コンチネンタルに対抗する軸を生み出せるか。統合後のかじ取りが問われる。

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