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 お好み焼きや焼きそばなどの料理で重宝する家庭も多い三島食品(広島市)の「青のり」。濃い青のパッケージがなじみ深い1971年発売の歴史ある商品だが、今年は様相が異なっている。パッケージが緑へと装いを新たにし、商品名も「あおのり」と平仮名表記となっているのだ。

販売が休止された三島食品の「青のり」(左)と代わって発売された「あおのり」(右)

 単なるパッケージのリニューアルではない。三島食品によると、従来の商品が作れなくなったことによる「苦肉の策」なのだという。

 どういうことなのか。これまで「青のり」はスジアオノリという種類のアオノリを使って製造。複数あるアオノリの中でも香りが強く、色鮮やかなのが特徴だ。だが、近年このスジアオノリの収穫量は激減。2015年度は100トン以上収穫されていたものの、19年度は10分の1の10トンを切る水準まで落ち込んだ。入札が行われない期間さえあったという。

 原因は特定されていないものの、スジアオノリが生産される河口周辺の水温上昇やミネラルをはじめとする栄養分の不足が理由とみられる。収穫量の激減は取引価格の上昇を招いただけでなく、「青のり」の安定的な供給を脅かすまでに。通年販売に必要な量の確保ができなくなり、ついに今年6月末に販売休止に至った。

 そうした中で三島食品が代替品として目を付けたのが、ふりかけやポテトチップスなどの菓子に使うことが多い同じアオノリの仲間のウスバアオノリとヒラアオノリという2種類だった。香りの豊かさなどではスジアオノリには及ばないものの「今できる精いっぱい」(三島食品広報)として売り出すことを決断した。

 ただ、冒頭に述べたように「青のり」としてではなく「あおのり」と商品名は変わり、パッケージも一新。スジアオノリではないものの、同じアオノリの仲間を使っていることから、従来の商品名とパッケージで販売を続けることもできたにもかかわらずだ。

 理由について三島食品の広報担当者は「我々にはアオノリを扱うリーディングカンパニーである誇りもあり、創業時からの行動指針には『正直』という文言もある。なので、あくまでこれまでとは違う商品であるということは、お客さまにきちんと正直に説明しないといけないとの考えだった」と説明。質の高い「青のり」で勝負してきた会社だからこそ、品質面で劣る代替品はあくまで代替品との意識が強かったようだ。商品名やパッケージの変更にはコストもかかるが、社内から反対の声はまったくなかったという。

 しかも、緑色の「あおのり」のパッケージの裏面には

「三島食品が品質に自信をもってお届けしてきたすじ青のりを伝統の青いパッケージで作ることができなくなりました。国内産地での記録的な不漁が続いた為です。陸上養殖をふくめ原料確保につとめていますがしばらく時間がかかりそうです。その間、今できる精いっぱいの青のりを準備しました。でも待っていてください。必ず帰ってきますから。」

 とのメッセージも掲載し、ことの経緯も説明。三島食品の問い合わせ窓口には「ばか正直」(同社広報)な対応に「売り場で商品を見て、そんなことが起きているとは知らず涙が出てきた」「緑の商品で待っています」などといった応援のメッセージが続々と届いているといい、売れ行きも従来の「青のり」と同程度で推移しているという。

「あおのり」の裏面に書かれたメッセージ