「(会計時に)楽天モバイルがつながらなくて楽天Payで支払えなかった」「楽天モバイルの無料期間が終わったからドコモ回線のahamoに変更した」――。

 SNS(交流サイト)上には現在、楽天グループの通信事業会社、楽天モバイルへの不満の声があふれている。ヤフー・リアルタイム検索によると、この1カ月間に楽天モバイルの回線がつながらないとつぶやかれたツイートは2000件を超える。

楽天モバイルは大規模なローミング終了を決断
楽天モバイルは大規模なローミング終了を決断

 ユーザーの不満が高まる中、楽天モバイルが自社の通信回線への切り替えを急いでいる。10月1日から23道県でKDDIのローミング(乗り入れ)によるサービスを順次終了し始めている。東京都や大阪府などこれまで独自回線に切り替えてきた地域を含めると合計39都道府県になる。10月22日に開催した記者会見で矢澤俊介副社長は、「これまでの20倍以上の規模」と語った。

KDDIへの支払いを止めたい楽天

 楽天モバイルが整備を進めてきた現行の「4G」の人口カバー率は、14日時点で94.3%。直近で21年夏としてきた96%の目標達成は半導体不足で22年3月に遅れる。それでも、参入時の計画である26年3月という目標からは4年も前倒しとなる。

 基地局の整備と呼応するように、楽天モバイルが進める自社回線への切り替え。この10月、一気にローミング停止を39都道府県にまで広げるのには楽天グループの台所事情が影響している。

 楽天グループの21年1~6月期の連結最終損益は654億円の赤字(前年同期は274億円の赤字)。基地局の設備投資が重荷になっている側面が大きいが、黒字化を達成するためにはローミング解消は欠かせない。

 KDDIが公表している約款によるとローミング費用は1ギガ(ギガは10億)バイトにつき500円。ローミングは月5ギガバイトまで使えるので、1ユーザー当たり最大で2500円をKDDIに支払う計算になる。一方、楽天の料金プランは20ギガバイトまで月2178円なので、5ギガバイトをローミングで使われると「逆ざや」になる。KDDIの決算資料からは21年4~6月期で300億円以上のローミング収入があったことが読み取れ、楽天にとって大きな負担となっていると推測できる。だからこそ矢澤副社長はローミングオフを「黒字化に向けた非常に大きなマイルストーン」と位置付ける。

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