
10月25日に一般公開が始まった東京モーターショー。公開初日は激しい雨と強風に見舞われるあいにくの天気だったが、入場のため多くの来場客が並んでいた。目当てはホンダ「フィット」やマツダの初の量産型EV(電気自動車)「MX-30」など、市販を控えたクルマだけではない。未来を感じることができる各社のコンセプトカーにも人だかりができている。
「トヨタブースには来年に販売する車は一つもない」。トヨタ自動車の豊田章男社長は23日のプレスカンファレンスでこう言い切った。その言葉通り、魔法のほうきをモチーフにしたほうき型モビリティーの「e-broom」などユニークなコンセプトモデルが数多く並んだ。そのなかで、異彩を放っていたのがトヨタブースとは別の会場に展示された自動運転車「LQ」だ。
LQはAI(人工知能)の「YUI」を搭載している。例えば事前にドライバーが「スポーツ好き」と把握していれば、YUIがドライバーに「今日、このスタジアムで開催されたサッカーの試合だけど・・・」などと対話することが可能だ。
自動駐車システムも備え、車両側のカメラやソナーと駐車場のカメラが連携することで自動的に入庫・出庫を行う。ほかにもドライバーの眠気を検知し、シートの動きや空調からの冷風で覚醒を促す世界初の「覚醒・リラックス誘導機能付きシート」や、トヨタでは初採用の、デンソーとJOLED(ジェイオーレッド)が共同開発した有機ELディスプレーなどふんだんに次世代技術を盛り込んでいる。
LQは2020年に開催される東京五輪・パラリンピックで、聖火リレーの隊列車両などにも導入される予定。今のところ市販の予定はないが、トヨタにとっては販売してもうける以上の意味が込められている。開発責任者の井戸大介氏は「人材の育成や教育で大きな意味がある」という。LQの開発で大きな役割を担ったのはAIに関わるソフトウエアの技術者で、「トヨタ社内でディープラーニング分野におけるリーダー的な存在」(井戸氏)だという。またYUIの開発や関連サービスではJTBやNTTドコモと、自動駐車システムはパナソニックと開発するなど、次世代技術を外部企業と連携して作り上げていく意味もある。
「さらにギアを上げてチャレンジする」。デンソーの有馬浩二社長は24日のプレス向け説明会で力を込めた。2025年までに世界全体でソフトウエアの技術者を約3割増やす方針だ。AIや自動運転分野ではIT勢との本格的な競争が始まっており、機械系エンジニアだけではいずれ太刀打ちできなくなる。LQが生まれた背景には、日本の自動車業界で広がるそんな危機感もありそうだ。
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