東京・渋谷駅周辺の小売店およそ40店が、渋谷区の要請を受け、ハロウィーンで大混雑が予想される10月26日と31日の夜間に酒類の販売を自粛する方針を決めた。

 セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンなどコンビニ大手各社は渋谷駅周辺のフランチャイズ加盟店に酒類販売自粛への協力を呼び掛け、24日までに24店が応じた。売り場の一部にカバーをかけるなどして閉鎖する。ディスカウントストア「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」も酒類売り場を閉鎖予定で、酒屋やドラッグストアなど十数店も販売自粛を表明している。東急百貨店(渋谷駅・東横店、渋谷・本店)は売り場自体は営業を続けるものの、販売自粛を掲げた看板を設置するという。

 2018年のハロウィーン直前の週末となった10月28日の夜には、渋谷駅近くで十数人の男が軽トラックを横転させる事件が起こり、結果的には4人が逮捕、10人が書類送検された。また、痴漢や盗撮、暴行、窃盗などの容疑で10月27日~11月1日朝の間に19人が逮捕されている。

2018年10月31日(水曜日)の渋谷スクランブル交差点の様子(写真:アフロ)
2018年10月31日(水曜日)の渋谷スクランブル交差点の様子(写真:アフロ)

 渋谷区はそうした犯罪を路上飲酒が助長したとして、小売店への酒類販売自粛要請に踏み切った。昨年も、割れた瓶の破片でけがをする恐れがあるとして冷蔵の瓶入りアルコールの販売自粛を求めたが、今年は酒類の商品全般が対象だ。渋谷区は6月、ハロウィーンや年末年始などのイベント期間に限って渋谷駅周辺の路上や公園での飲酒を禁止する条例を施行済み。この条例には酒の販売自粛など事業者の協力義務も盛り込まれている。

 10年代に入ってから次第に定着し、年々混雑の度合いを増してきた渋谷ハロウィーン。渋谷駅周辺では年間でも有数の販売機会となるため、特にコンビニのフランチャイズ加盟店のような中小小売りにとって、酒の販売自粛は手痛い損失となりかねない。それでも加盟店側が対応を受け入れたのは、未成年飲酒という、より大きなリスクが存在するためだ。未成年者飲酒禁止法では、飲酒した未成年本人は処罰されず、酒を販売した店舗とその従業員が罪に問われることになる。

 「客に年齢確認を求めるかどうかはただでさえ判断が難しく、トラブルの原因にもなる。ハロウィーンの仮装をしていた場合はそれがさらに困難になる」(大手コンビニ関係者)

 しかし、一部小売店が機会ロスを受け入れたところで、当日の騒ぎや犯罪行為が実際に抑制されるかどうかは未知数だ。条例で定められた路上飲酒禁止エリアは700メートル四方程度で、通常の交通状況の場合、端から端まで歩いても10分ほどしかかからない。近隣地区の店で酒を買って渋谷駅周辺の路上で飲酒すれば警察官に指導を受けるが、条例に罰則規定はない。また、区は飲食店での酒の販売に対しては自粛を要請していない。

 渋谷区はハロウィーンでの事件・事故防止のため1億円を投じ、当日は警備員を配置して仮設トイレも準備する。渋谷駅周辺でのお祭り騒ぎが街の魅力につながるか。それとも毎年襲い来る「災害」のような負のイベントとして定着するのか、今年のハロウィーンが試金石となりそうだ。

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