公設秘書が地元支援者の通夜で香典を手渡した疑惑が浮上していた菅原一秀経済産業相が25日、辞任に追い込まれた。菅原氏は十数年前に選挙区内の有権者にメロンやカニなどの贈答品を配った疑惑が先に報じられたばかり。政権内や有識者からは「あまりに自覚がない」「グレーはアウトになる時代との再認識が必要」といった声が出ている。
菅原氏の「香典疑惑」は24日発売の週刊文春が報じた。菅原氏の公設秘書が17日、地元の東京都練馬区で行われた支援者の通夜会場で2万円が入った香典を手渡したとの内容だ。

公職選挙法は政治家本人が出席した際に持参する結婚祝いや香典を除き、選挙区内での寄付行為を禁じている。菅原氏は辞表提出後の記者会見で「台風19号の閣僚会合が入ったため、そちらを優先しなくてはならず、翌日の葬儀に自ら出席して弔意を申し上げた。結果として秘書が香典を出した。翌日、確認せずに私も香典を持って行った」などと釈明した。
菅原氏を巡っては、先に選挙区内の有権者にメロンやカニなどの贈答品を配った疑いも報じられていた。政権内では「十数年も前のことだ」と楽観視する向きもあったが、新たな香典疑惑の浮上で状況が一変した。
菅原氏は25日午前の衆院経産委員会で経緯を説明するとしていた。だが、野党側が納得できる説明がない限り国会審議に応じない姿勢を強め、政府・与党内でも早期の辞任を求める声が広がっていた。
自民のある閣僚経験者は「メロンやカニの問題で追及されている最中に香典問題を起こすのだから、事務所も含め自覚がなさ過ぎる」と突き放す。
国会議員による選挙区の有権者への贈答品の扱いを巡っては、これまで何度も問題になってきた。例えば2014年には当時の松島みどり法相が地元の祭りで自らの似顔絵などが描かれた「うちわ」を配布したとして閣僚を辞任している。
党内力学に影響を及ぼす可能性も
政治とカネの問題に詳しい日本大学の岩井奉信教授は「贈答品や慶弔費を巡る問題で事件化されることまではないとしても、今回の菅原氏のように閣僚の辞任に追い込まれるなど責めを負うことになる。グレーな支出はアウトになるということを政治家は改めて自覚すべきだ」と指摘する。
菅原氏は無派閥で菅義偉官房長官の側近として知られ、9月の内閣改造で初入閣した。就任から1カ月半ほどで重要閣僚が辞任する事態となり、政権への打撃は小さくない。
安倍晋三首相は25日午前、首相官邸で記者団に「任命責任は私にあり国民に深くおわびする」と謝罪。菅原氏の後任に梶山弘志元地方創生相を充て、早期の事態収拾を図る構えだ。一方、野党側は辞任による幕引きを許さず、引き続き事実解明を求めるなど攻勢を強めている。
自民党内では「ポスト安倍」の有力候補に挙げられる菅氏への風当たりが強まるとの見方が出ており、党内力学に影響を及ぼす可能性もある。
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