ソフトバンクグループ(SBG)は10月23日、企業や個人事業者にオフィスを貸し出すシェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーに追加の金融支援策を発表した。同社の既存株主から株式を買い取るなど総額95億ドル(約1兆円)を投じる。

 ウィーカンパニーはSBGなどが作った10兆円規模のファンドなどから累計100億ドル(約1兆800億円)超の出資を受け、それを元手に事業を拡大。一時は企業価値が470億ドル(約5兆円)と推定され、4月末にはIPO(新規株式公開)に向けた手続きを開始したと発表した。だがそれに前後して、ビジネスモデルの将来性やずさんな経営を問題視する声が投資家などから噴出。IPOは延期され、資金繰りが悪化しているとの指摘も相次いでいた。

2018年6月からソフトバンクグループ副社長COO(最高執行責任者)のマルセロ・クラウレ氏(写真:AP/アフロ)
2018年6月からソフトバンクグループ副社長COO(最高執行責任者)のマルセロ・クラウレ氏(写真:AP/アフロ)

 ウィーカンパニーの株式公開で巨額の利益を得るはずが、逆に経営再建への追加支援を余儀なくされた形のSBG。投じる金額の大きさとともに目を引くのが、孫正義会長兼社長がウィーカンパニー再建のために送り込む懐刀だ。マルセロ・クラウレ氏、48歳。3人いるSBG副社長の一人でCOO(最高執行責任者)を務め、かねて孫会長の後継者候補の一人と目されている。ウィーカンパニーで会長として経営を主導することになったが、一体どんな人物なのか。

SBG孫会長と同じ“たたき上げ”

 「見た目は山賊のようだ」「彼はストリートファイターだ」

 SBGの孫会長から親しみを込めてこう呼ばれるクラウレ氏は南米ボリビアの出身で、同国サッカー協会幹部も務めるなど異色の経歴だ。1990年代後半に米国で携帯電話の販売会社ブライトスターを起業すると、端末の無料配達を売りにした販売手法で事業を一気に拡大。世界中の携帯電話会社や端末メーカーと取引関係を持ち、120カ国を超える世界最大級の販売網を築き上げた。一代でのし上がった孫会長と同じ、たたき上げの経営者だ。

 同氏は2013年にソフトバンクのブライトスター買収を受け入れ、すぐに端末調達などグループ戦略の一翼を担った。さらに14年には、ソフトバンク(現SBG)が13年に買収したものの業績の低迷が続いていた米携帯大手スプリントのCEO(最高経営責任者)として経営再建を託された。

 クラウレ氏はトップ就任以降、上位2社からの乗り換え客の料金を半額にするキャンペーンなどを実施。並行して年2000億円規模の経費削減プロジェクトも主導した。人員や経費の削減を通じて、孫会長が「じゃぶじゃぶ」と評していた高コスト体質を改善。複雑怪奇だった料金プランを簡略化して販売員の負担を減らすなど営業改革も進めた。結果、スプリントは16年3月期に営業黒字を、18年3月期には最終黒字を達成。通期での黒字確保は実に11年ぶりだった。

 こうした実績を踏まえるとSBGきっての「再建屋」には違いなく、ウィーカンパニーに送り込まれる人物としてはうってつけに見えるクラウレ氏。だが、既に事業の行き詰まりを指摘されている同社がかつての成長軌道にどこまで戻れるかどうかは不透明だ。クラウレ氏のスプリントでの経営手腕はこれまでのところ、どちらかと言えばコストカットや営業強化といった地道な施策で発揮されてきた。

 米携帯市場で大胆な経営の一手をもって“台風の目”となったのはむしろ、業界4位からスプリントを抜いて3位に躍り出たTモバイルUSのほうだ。2年契約を途中で解約する際に高額の違約金を課す、いわゆる「年縛り」をなくす。動画や音楽のデータ配信には課金しないサービスを導入する──。斬新な戦略を次々に繰り出し、それが大当たりして契約者数を急伸させた。SNS(交流サイト)を通じて競合他社を痛烈に批判することで知られた名物経営者ジョン・レジャーの、“改革者”のイメージが奏功した面もある。

 SBGは世界の名だたるユニコーン企業に次々と巨額出資し、7月には10兆円ファンド第2弾の設立も決まった。だが、ここでウィーカンパニーの再建が遅れれば、孫会長の“目利き力”に依存しているとも言われるファンドの運営にも支障をきたしかねない。ウィーカンパニーは「世界中で人々の働き方に起こっている変革の最前線にいる」(孫会長)会社に再びなれるのか。孫会長に重用されてきたクラウレ氏だが、早くも難問が待ち構えている。

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