お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんが設立した会社が、3年間にわたって無申告だったとして、東京国税局から約1億を申告漏れと指摘された。さらに、洋服代など私的な支出を経費として計上したとして、2000万円の「所得隠し」も認定された。徳井さんはこの会社で、所属事務所からテレビの出演料などを受け取っていた。すでに修正申告と納税を済ませたという。

申告漏れと所得隠しについて、取材に応じるチュートリアル徳井義実さん(写真=共同通信)
申告漏れと所得隠しについて、取材に応じるチュートリアル徳井義実さん(写真=共同通信)

 報道を受け、インターネット上では「悪質だ」「逮捕されないのか」といった声が挙がった。実際のところ、逮捕されるのはどういうケースなのか。調べてみた。

 まずは、「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」の定義。これらの言葉には実は明確な定義はない。だが一般的には、「申告漏れ」は、「計算の誤りなど意図的な税金逃れではないもの」を指す(榎本税務会計事務所)。

 国税庁によると「申告漏れを指摘された場合、納付すべき税額に10%の過少申告加算税が課されるが、仮装・隠蔽を図ったと判断された場合は、過少申告加算税に代えて35%の重加算税が課される」。重加算税が課されると、「所得隠し」と言われる。

 「脱税」はより悪質性が高いものだ。「所得隠しか脱税かは、個々の事案によって判断」(国税庁)されるため、明確な基準はない。

申告漏れ 計算の誤りなど意図的な税金逃れではないもの
所得隠し 仮装・隠ぺいを図ったと判断されたもの
脱税 所得隠しよりも悪質なもの
注)榎本税務会計事務所、国税庁の説明をもとに、編集部作成

 申告漏れや所得隠しが指摘されるまでの流れは一般的にはこうだ。まずは、国税局や税務署の職員が税務調査に入る。申告書が正しいかどうかを確認し、申告漏れや所得隠しがあれば指摘し、修正申告の提出を促す。

 一方、脱税の告発までの流れは異なる。担当するのは国税局の査察官。俗に「マルサ」と呼ばれる人たちだ。

 国税庁によると、査察官の仕事はこうだ。

 脱税の可能性のある者を発見すると、脱税の規模や手口をより具体的に確認するための内定調査を実施する。調査の結果、多額の脱税が見込まれ手口も悪質と認められると、裁判所から許可状の交付を受ける。その許可状に基づいて強制調査に着手し、証拠書類などを集める。

 その結果に基づいて、悪質性が高いと認められたものには税法違反で検察庁に告発する。東京国税局によると、2018年度の告発率は60.3%。過去5年の告発率も6割程度で推移している。

 告発を受けた検察は捜査を実施する。このときに、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合になされるのが逮捕だ。捜査後、犯罪の嫌疑が認められる場合には起訴し、裁判所が判決を下す。

脱税で逮捕される例
脱税で逮捕される例

 徳井さんの会見の内容を聞く限り、国税局に脱税を告発されたわけではないので、逮捕に至ることはないだろう。だが、巨額の申告漏れや所得隠しがあった社会的責任は重い。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。