「朝からいろんなニュースを見たけど、どこの説明も間違っている」。業績見通しを下方修正した翌日も「永守節」は健在だった。

24日、決算説明会に登場した日本電産の永守重信会長CEO
24日、決算説明会に登場した日本電産の永守重信会長CEO

 日本電産は10月24日、都内で2019年4~9月期の決算説明会を開催した。前日の23日、20年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比10%減の1000億円になる見通しだと発表。従来予想の1350億円から350億円下方修正した。2期連続の最終減益となるが、登壇した永守重信会長CEO(最高経営責任者)は冒頭の言葉を皮切りに強気な発言に終始した。

 下方修正の主要因は、EV(電気自動車)の駆動を担うトラクションモーターへの先行投資がかさむため。研究開発や生産立ち上げなどに約300億円を投じることが、利益を押し下げる。注力する車載事業で「これだけ来るか!というくらい受注が殺到している」(永守氏)ことが背景にある。

 とりわけ先行投資するトラクションモーターでは「(前回決算からの)3カ月間で一気に受注が約5倍に増えた」と永守氏は自信を示す。7月時点では19年度から21年度にかけて90万台を見込んでいた受注台数が、10月時点では19年度から23年度までの合計で455万台に増えたという。22年度からはEV向けに加え、ハイブリッド車向けにも供給することも明かされた。「中国のOEM(完成車メーカー)に加え、欧州のOEMやティア1(1次部品メーカー)からの引き合いが増えている」と永守氏は語る。

 トラクションモーター市場における日本電産のシェアは、現状約4%(同社推定)だが、30年には35%に高める計画を掲げている。永守氏は、「勝負するときに勝負せなあかん。大きな波が来ているので全部取る」と宣言。「これ(先行投資)をもって、減益になると言われても何だと。はっきりと先が見えてきた。(もし選挙なら)出口調査で当選確実だ」とユーモアを交えながら語った。

 日本電産は、今後も投資の手を緩めない考え。トラクションモーターの工場建設について、「今は中国メーカーとの取り引きが多いので中国の浙江で立ち上げた。大連でも来年末までに工場を立ち上げ、欧州はポーランドを増設する。北米はメキシコで作る」(永守氏)。4拠点が立ち上がれば、「月産100万台になるが、今の受注ペースだと足りなくなる」とさらなる投資も視野に入れる。 

 強気一辺倒の永守氏。だが、世界最大のEV市場である中国では、9月の新車販売統計でEVやPHV(プラグインハイブリッド車)など「NEV(新エネルギー車)」の販売台数が前年同月比で34.2%減った。補助金が減額された結果で、「EVバブル」がはじけつつあるのはリスクだろう。もっとも永守氏は、部品の共通化などでコストダウンが進めば「EVの価格は5分の1になる」とし、低価格化が普及を促す考えを示した。

 「投資額は大きいが、リターンも大きい」。永守氏は今回の決断をこう評した。HDD(ハードディスクドライブ)用モーターでは積極投資が奏功した永守氏。EVでも実を結ぶかどうかは、トラクションモーターの出荷が本格化する21年度以降に明らかとなる。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

春割実施中

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。