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 原産地の南米から世界には既に広がっている。船や飛行機に積まれたコンテナや貨物に紛れて、米国や中国、台湾、オーストラリアなどに拡散。今まで定着を防いだのは、素早い駆除が奏功したニュージーランドしかないという。

 日本はどうか。国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長は、「ヒアリは日本の都市で『定着』が進む恐れがある」と指摘する。

 ヒアリは畑や公園、芝生など人の生活圏に住むことを好む。都会は温暖な時期が長く、天敵や競争相手が少ない。ごみが餌になる。今回もコンクリートの隙間などから見つかっており、ヒアリには住みやすい環境だといえそうだ。

 ヒアリの被害は、人の生命や身体にとどまらない。閣僚会議に提出された資料によると、米国では家や庭に入り込んで使えなくなったり、農作物を食べたりと被害が広がっている。被害額と対策費は年1兆円以上にのぼり、年間8万人が病院で治療を受けている。配電盤に巣を作って、電気設備や信号機が使えなくなる被害も出ているといい、電線がむき出しになっている日本でも定着すればインフラに危険が及びかねない。

 殺虫剤大手のアース製薬によると、「現在のところ、問い合わせが増えたり、殺虫剤や防虫剤の売れ行きが伸びたりということはない」という。17年に国内で初めてヒアリが見つかった際は、夏前でこれから虫が増えるシーズンだったこともあり、売れ行きが伸びたが、今回は虫がおとなしくなる10月ということもあり、大きな反響はないという。

 定着や被害の拡大を防ぐには、どうしたらよいか。島国の日本は海岸線に港が点在し、侵入経路が多い。近年はインバウンド(訪日外国人)が増え、輸入品を抑制することも現実的ではない。セアカゴケグモやアルゼンチンアリなど、アリや蚊、ハチ、クモといった外来種の発見例も増えている。五箇氏は、「水際対策はもちろん大事だが、今や日本は『外来種大国』となった。外来種が身近にやってくるリスクを織り込んで、国民レベルで注意することだ」と話す。

 ヒアリらしい虫を見つけた場合は、「環境省ヒアリ相談ダイアル」(0570-046-110)や地方自治体の環境担当部局まで。数が少ない場合は殺虫剤で駆除し、巣や集団を見つけた場合は、刺激せずに相談ダイアルまで連絡する。

 ヒアリは小型で専門家以外には判別が難しい。環境省は「むやみに全てのアリを駆除するとかえってヒアリが定着しやすい環境をつくってしまうので、困ったときは相談を」と呼びかけている。

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