130年で初の黒人主将

 それから24年。W杯準々決勝の日本戦で、マンデラ、ピナールと同じ背番号「6」をまとった大男は、肩を組み、目を閉じて上を向きながら、国歌を熱唱した。シヤ・コリシ。28歳。同国ラグビー130年の歴史の中で、初の黒人主将である。

 95年の優勝をきっかけにラグビー人気は急激に高まり、スプリングボクスのメンバーに選ばれることは南アフリカの多くの少年にとっての夢になった。コリシもその1人だ。貧しい幼少期を過ごした。12歳で出場した試合でスカウトされ、奨学金を得ながら進学してラグビーを続けた。

 今や南アフリカにとってラグビーは白人だけのスポーツではなく、人種を超えて裾野が広がっている。ラグビーの国際団体であるワールドラグビーによれば、国・地域別の競技人口(各国ラグビー協会への登録者数)は南アフリカが約63.5万人で世界1位。2位のイングランド(約35.5万人)、3位のオーストラリア(約27.2万人)を大きく引き離している。日本は約10.9万人で世界11位にとどまる。

 もともと力強いフィジカルが特徴だった南アフリカ代表は、競技人口の増加を背景とした層の厚みが加わり、2007年には2度目のW杯制覇をなし遂げた。前回大会では予選プールで日本に「ラグビー史上最大の番狂わせ」ともいわれる敗北を喫したものの、決勝トーナメントに進み、3位の成績を残した。

 分断を乗り越え、少年の夢となったチームは、12年ぶりの優勝杯奪還を目指している。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。