通信大手が相次いで顔認証ソリューションの提供に乗り出した。ソフトバンクは自社開発に踏み出し、NTTドコモは米社のソフトをクラウドで提供する。5Gの特徴である低遅延を売りにしようとしているが、通信の安定性にはまだ不安が残る。

ソフトバンクはBリーグの開幕戦で3000人規模の実証実験を行った
ソフトバンクはBリーグの開幕戦で3000人規模の実証実験を行った

 「7月中旬に開発を始め、9月末には実証実験すると発表した」。ソフトバンクの顔認証ソリューション「Face&Go」の担当者は、実験の舞台となる男子プロバスケットボール「Bリーグ」の開幕戦をにらみ、突貫工事で開発を急いだと話す。

 「Bリーグ」はソフトバンクがトップスポンサーを務めている。9月30日と10月2日に沖縄アリーナ(沖縄市)で、入場手続きやフード・ドリンク・グッズの受け取り、送迎バスの乗車などの本人確認を顔認証で行った。

 試合の観戦チケットを購入した人は2試合で延べ8000人。顔情報を登録すればフードやドリンクなどを無料で提供すると呼びかけたところ、約4割に当たる約3400人が実証実験に参加した。

「抵抗なく使えるのは顔認証」

 顔認証の実験をすることになったきっかけは、Bリーグ側との対話の中で、新型コロナウイルス禍の影響下で安全・安心な試合を実施するために、非接触ソリューションが重要だという意見が出たことだった。

 Bリーグはすでに、スマートフォンの画面に表示させたQRコードを読み取って入場する仕組みを採用している。ただ、読み取る係員が必要だ。顔認証にすれば、利用者はスマホを取り出す手間が省け、Bリーグ側は係員を配置せずに済む。

 それだけではない。スタジアム内の購買なども顔認証にできれば、感染対策だけでなく、誰がどこで何を買ったのかというデータも追うことができる。

 ソフトバンクの榛葉淳副社長兼COO(最高執行責任者)は「データを分析することでマーケティングにも活用できる」と話す。顔だけでなく指紋や静脈など生体認証の種類は数多いが、「老若男女が細かな説明なしに抵抗なく使えるのは顔認証以外にない」(榛葉氏)。

ソフトバンクの榛葉氏は「顔認証システムによってスポーツ観戦の体験を変える」と話す
ソフトバンクの榛葉氏は「顔認証システムによってスポーツ観戦の体験を変える」と話す

 コロナによって非接触ソリューションのニーズが高まっていることに加えて、高速大容量・低遅延といった5Gの特徴が生かせるとソフトバンクは考えている。同社の担当者は「5Gになれば、より低遅延のエッジコンピューティングとの組み合わせも使える」と話す。画像データをクラウドまで送るのではなく、最寄りの基地局などに設置したサーバーで処理することで、より短時間で顔認証を完了できるようになるという。

 これまでソフトバンクは、100%子会社の日本コンピュータビジョン(JCV、東京・千代田)を通じ、香港の顔認証大手・センスタイムの技術を用いたソリューションを販売してきた。しかし、5Gの有力なユースケースにしていくためには、自社で認証ソリューションを持つことが重要と考え、Face&Goの開発に踏み切った。

 カナダのアプライドレコグニションが開発した顔認証エンジンをベースにしつつ、顔画像を加工して複数のサンプルを作り、機械学習により認証精度を向上。これまでの実験では精度を99%まで高めることができた。ユーザーが顔情報を登録するアプリや、顔認証のアプリも開発した。

 ただ、初めての実証実験となったBリーグでの取り組みでは、様々な課題が浮き彫りになった。

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