1週間で英国のEU(欧州連合)離脱交渉は状況がめまぐるしく変わった。10月10日に英国のジョンソン首相とアイルランドのバラッカー首相が会談し、バラッカー氏は「(離脱日までの合意が)可能だ」と述べた。それ以降、英国とEUの両サイドから合意に向けて楽観的な発言が相次ぎ、17日のEU首脳会議前の合意が見え始めた。
だが、16日には深夜まで合意がまとまらず、今後はやはり合意は難しいとの重苦しい空気が流れる。EU首脳会議が開催される17日朝には時間切れの雰囲気が広がったが、同日の10時ごろにジョンソン英首相がツイッターで「偉大な新しい合意に達した」と述べ、EUのユンケル委員長もツイッターで「我々は合意に達した」と発言。英国とEUの交渉チームは、首脳会議の直前に合意にこぎつけた。

合意した新離脱案の概略はこうだ。2020年までの離脱の移行期間が終わると、メイ前首相が結んだ離脱案では解決策が見つかるまでEUの関税同盟にとどまるが、新離脱案では北アイルランドを含む英全土がEUの関税同盟から抜ける。そのため、英国は世界の国々と自由貿易協定を結ぶことができる。
ただし、EU加盟のアイルランドと英領の北アイルランドでは厳格な国境管理を避けるものの、農産品や工業製品などに関しては、北アイルランドでの物品検査を省略するためにEUのルールを適用する。「一国二制度」のような状況になる。
17日の午後3時頃、各国首脳が会議場に入った。いつもより緊張感は少ないように感じられた。報道陣が構える通路に、ジョンソン英首相は現れなかったが、EUのユンケル委員長やメルケル独首相、マクロン仏大統領などが現れ、丁寧に記者の質問に答えていた。

そして、各国首脳が全会一致で承認。午後7時ごろから記者会見場でEU首脳の会見が始まった。EUのトゥスク大統領とユンケル委員長、バルニエ首席交渉官などが会見に臨んだ。アイルランドのバラッカー首相は、「EUの結束は強くなった」と発言した。
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