パナソニックは10月17日、限られた区域内で自動運転車を走行させるモビリティーサービスの提供を始めると発表した。まず、大阪府門真市のパナソニック本社地区と隣接する西門真地区で、社員を対象に始めた。2021年ごろに他社や自治体への提供を目指す。

サービスを始めた本社地区と、隣接する西門真地区の敷地面積の合計は46万8400平方メートルで、敷地内では約1万4200人が働いている。ここに1周約2.4キロメートルの走行ルートを設定。4つの乗降ステーションを設けた。利用者は専用アプリや専用サイトを通じて予約した上で乗車する。最大4台の小型自動運転車両を投入し、午前9時20分から午後4時30分まで最短10分間隔で運行する。モビリティーサービスの事業化を担うビジネスイノベーション本部の東島勝義氏は「敷地内を移動するのに時間がかかっていたが、移動時間が短縮され、効率化につながる」と期待する。
車両となるのが、EV(電気自動車)だ。パナソニックが開発した、AI(人工知能)や人認識技術を活用した自動走行システムを搭載。時速20キロメートルの低速で走行する。同社は運行中の危険を予知・予測する運行管理システムも構築、少人数でも安全に管制業務ができるようにしたという。
パナソニックは、世界トップクラスの車載電池メーカーで、これまでのノウハウや技術をEVに生かせるとみて開発を進めてきたという。特定エリア内を低速で走るモビリティーサービスなら、参入ハードルも高くない。
具体的な導入先として、村瀬恭通参与は「(25年の)大阪・関西万博や(万博開催前の開業が目指されている)統合型リゾートへの提供を狙いたい」と述べた。万博や統合型リゾートは、地域が限定されているため、モビリティーサービスを展開するにはふさわしいとみている。
ただ、こうしたサービスには、他社が相次いで参入を決めており、ライバルは多い。トヨタ自動車も「イーパレット」と名づけたEVを20年の東京五輪・パラリンピックで選手送迎用に導入する予定。既存の自動車メーカーや異業種の企業が競い合う中で、パナソニックが他社とどう違いを出すかが事業を拡大するためのカギとなる。
他社との差異化について村瀬氏は「家電をやってきたこともあり、人に寄り添えるサービスを提供できる」と強調。サービスは導入先の地域ごとに合ったものを提供する必要があり、こうした分野で強みを生かせるとの考えだ。多くの企業が狙う事業領域においての差異化は難しいが、パナソニックは独自色を出せるか。参入ハードルが低い分野だけに、競争も一段と激しくなりそうだ。
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