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1分解説
  • ・台風19号で浸水したエリアと、水害を予測した「ハザードマップ」を重ね合わせ、どの程度一致しているか検証した。
  • ・長野市北部では、実際の浸水の範囲や深さがハザードマップの想定内に収まっており、有効性が実証された。
  • ・実際の被害は「水の深さ」と比例しない。氾濫した濁流の「速さ」が住宅を壊滅させた。

 台風19号によって、全国各地で河川堤防の決壊が相次いだ。市街地で大規模な浸水が発生し、住宅被害も続出している。実際に浸水した範囲と、各自治体が事前に浸水を想定した「ハザードマップ」はどの程度、一致したのか。独自に2つの地図を重ね合わせると、水の「深さ」だけではない重要な視点が見えてきた。

 検証したのは、千曲川が決壊して大規模な浸水被害が発生した長野市北部。国土交通省によれば長野市内で約950ヘクタール(東京ドーム約200個分)が浸水し、床上浸水した住宅は10月17日時点で調査中だ。JR東日本の長野新幹線車両センターの車両基地が浸水し、北陸新幹線の車両120両が水没した。

 まずは下のアニメーションを見てほしい。長野市のハザードマップの上に、台風19号による浸水エリアを重ねてみた(詳細は後述)。すぐに分かるのは、実際の浸水地域が、すっぽりとハザードマップの浸水予想範囲に収まっていることだ。

 アニメーションで重ね合わせたのは次の2つの地図だ。1つは、長野市が作成した「洪水ハザードマップ」。河川が氾濫した際の浸水予測結果に基づいて、浸水の範囲や深さ、避難所などを示している。地図中の赤色のグラデーションで示されたのが浸水が予想される範囲で、色が濃ければ濃いほど深くなる。濃いピンク色で示されたエリアの浸水深さは10〜20mだ。

 ハザードマップの上に重ねたのは国土地理院が作成した「浸水推定段彩図(速報版)」。国土地理院が10月13日に撮影した空中写真や収集情報、標高データを基に、浸水範囲における水深を推定した。国土地理院応用地理部の小野康・企画課長補佐は「写真などを基に作成しているため、実際に浸水したエリアとずれている場合がある」と話す。水色が濃くなればなるほど、浸水が深かったことを示している。

 水色のエリアは、ハザードマップの赤色の範囲に収まっており、かつ、ハザードマップより実際の被害の方が浸水は浅い。河川工学が専門で、10月16日に千曲川流域の被害状況を調査した名古屋大学大学院の中村晋一郎准教授は「実際に現地を調査しても浸水は深くて4m程度。エリアも想定通りで、ハザードマップの有効性が改めて確認できたと言っていい」と話す。

 長野市危機管理防災課によれば、千曲川は過去に何度もあふれたことがあり、長野市はハザードマップを作成して注意喚起を繰り返してきた。最新の想定に基づいて改定を繰り返し、今年8月に、浸水想定エリアの地区の全戸に最新版を配布したばかりだった。

長野市ハザードマップ
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「想定しうる最大規模の降雨」として、千曲川に関しては「1000年に1度程度の降雨」を想定。仮定した雨の量は、千曲川で2日間396mm、支流の浅川で24時間766mm。
国土地理院作成の浸水推定段彩図(速報板)
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ハザードマップと浸水推定を重ねた合成図
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浸水した地域(地図中の青色)だけを残した状態
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