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 米投資ファンドのブラックストーン・グループが10月15日、不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングスにTOB(株式公開買い付け)を再提案する意向を表明した。1株5000円での買収提案を水面下ですでにしていたが、ユニゾに拒否されたため。ユニゾの対応次第では敵対的TOBに発展する可能性もある。

 ブラックストーンとユニゾの例を見るまでもなく、最近、敵対的TOBという言葉を聞く機会が増えてきた。ユニゾに対しては旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)も敵対的TOBを仕掛けた。今春、伊藤忠商事によるデサントへの敵対的TOBが成立したのも記憶に新しい。敵対的TOBという文化が日本には根付いていないこともあって、一般的には仕掛けた側が「無理やり物騒なことを始めた」と捉えられがち。しかしHISや伊藤忠は誰にとって「敵」だったのか。

敵対的というと、物騒なイメージがつきまとうが……(写真:Comstock Images/Getty Images)

 そもそも最初のTOB発表時点で敵対的TOBというものは存在しない。被買収会社の取締役会が「TOBに反対」と表明した時点で、ただのTOBが敵対的TOBに発展することになる。伊藤忠とHISのTOBに対して、デサントとユニゾはそれぞれ反対意見を出したため、敵対的TOBと呼ばれるようになった。

 和を重んじがちな日本の企業は敵対的買収によるレピュテーション(評判)リスクを気にするため、欧米と比べて格段に敵対的TOBは少ないのが実態だ。そして実際、これまでに成立した事例は伊藤忠・デサントなどごくわずかしかない。

 伊藤忠やHISに対して「こんな野蛮なことをするのはけしからん」という意見が世の中で聞かれたのは事実。では実際のステークホルダー(利害関係者)、特に資本市場では会社は株主のものと定義されることが多いが、その株主はTOBをどう受け止めたのか。

 「沢田さんは神!」。HISのTOBを受け、ネット上ではHISの沢田秀雄会長兼社長を神とあがめる書き込みが相次いだ。HISがTOBを発表した今夏までの3年ちょっとでユニゾの株価は約3分の1に下落、HISのTOB直前では2000円を割り込んでいた。含み損を抱え塩漬けを余儀なくされていた株主は多く、そうした株主からすると1株3100円でTOBをかけたHISは、塩漬けで半ばあきらめていた株を高値で売却するチャンスを与えてくれた「神」というわけだ。

 結局、ユニゾがホワイトナイト(白馬の騎士)として呼んできた米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが1株4000円でTOBを開始、HISのTOBは不成立に終わった。だが今度はこれまで買収提案を拒否され続けてきたブラックストーンが、敵対的TOBをいとわない勢いでさらに1株5000円のTOB提案の意向を表明したというのが冒頭に述べた15日の発表内容。HISのTOBをきっかけに、ユニゾの株価は一気に5000円近くまで回復している。