不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングスに新たなTOB(株式公開買い付け)が降りかかるかもしれない。1株5000円での買収提案をユニゾに拒否された米投資ファンドのブラックストーン・グループが15日、ユニゾにTOBを再提案する意向を表明した。ユニゾの対応次第では敵対的TOBに発展する可能性もある。ユニゾには旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が今夏に敵対的TOBを仕掛けて失敗、現在は米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループによるTOBが進行中だ。同じ企業に対してこれだけ短期間に3度のTOBがかかれば異例のことになる。

(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 ブラックストーンは15日、ユニゾ株を1株5000円でTOBする意向があると表明する。ブラックストーンはこれまで9月や10月初旬にも水面下でユニゾに買収提案をしてきたが、いずれも従業員を保護する仕組みが十分ではないという理由で拒否されていた。今回の意向表明も原則としてユニゾ経営陣の同意が得られることを前提としているが、ユニゾが拒否した場合は「あらゆる選択肢を検討する」(ブラックストーン関係者)としており、敵対的TOBに発展する可能性がある。

 ユニゾを巡っては7月にHISが1株3100円で敵対的TOBを開始、8月にユニゾがホワイトナイト(白馬の騎士)として連れてきたフォートレスが同4000円でTOBを開始していた。HISのTOBは応募がないまま失敗、フォートレスのTOBは期限が延長され10月17日が最終日だ。ただユニゾはホワイトナイトとして連れてきたフォートレスのTOBに対する態度を、従業員の権利が十分ではないことなどを理由に9月末に「賛成」から「留保」に変更しており、両者の友好関係は崩れた。しかも株価は15日終値で4700円と4000円を大きく上回っており、このままだとフォートレスのTOBも不成立に終わることになりそうだ。

 今回のブラックストーンのTOB意向表明では、従業員が現在はほぼ享受していない①ユニゾの企業価値増加から生じる利益を共有するインセンティブ報酬プログラムに参加できること②ユニゾ株を取得しユニゾの好業績から生じる利益を共有する機会、さらに③ユニゾの経営方針に関する議論に参加できるよう、取締役会に少数の取締役を派遣する権利、を付与するとしている。

 一方で、ユニゾ側が買収に合意する条件として求めている「従業員持ち株管理会社がブラックストーンのエグジットの時期と方法を選択できる」という「仕組み」に関しては、「日本において(おそらくその他のいずれの国においても)前例のない」異例の要請として、受け入れられないとした。ファンドは投資先の企業価値を上げて数年後に株式を売却(エグジット)して利益を得るビジネスモデルだが、そのエグジットの自由が奪われることはファンドにとって自分の首を絞める行為だからだ。

 今後の焦点はユニゾ側の出方になる。ブラックストーンの提案は、エグジットが縛られる「仕組み」はファンドとして受け入れられないが、その代わり従業員の権利を様々な形で保証するというもの。ユニゾが良くも悪くも筋を通して「仕組み」にこだわるのならば提案を拒否するとみられ、敵対的TOBに発展しかねない情勢だ。そもそもファンドがこうしたTOBの意向を公に表明すること自体が極めて珍しい。異例ずくめのユニゾ争奪戦の終わりはまだ見えないままだ。

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