
台風一過の晴天となった10月13日、鈴鹿サーキットに集まった約8万9000人の歓声はレース開始10秒ほどで嘆声に変わった。フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)第17戦の日本グランプリ(GP)決勝、ホンダエンジンを搭載するアストンマーティン・レッドブル・レーシングのエースドライバー、マックス・フェルスタッペンの車がスタート早々、2コーナーで他車と接触、コースアウトしたためだ。フェルスタッペンはコースに戻るもペースが上がらず、15周目でマシンをピットに戻し、リタイア。同僚のアレクサンダー・アルボンが4位に食い込み健闘をみせたが、勝利には程遠い内容で終わった。
ホンダエンジンを搭載し、今シーズン2勝したレッドブル。ホンダのホームである鈴鹿での期待は高かった。「残念な結果になった」。本田技術研究所でF1の開発責任者を務める浅木泰昭執行役員も4位という結果には満足していない。
入社早々F1の担当になり、その後北米向けV6エンジン、軽自動車N-BOXの開発を担当してきた浅木氏。「負け続けていた技術者を何とかしたい」という思いでF1の責任者を引き受けた。今のF1でトップチームの一つとされるレッドブルと、トップレベルのドライバーとされるフェルスタッペン。2つをそろえて2つの勝利、格好はつけている。
しかし、浅木氏が求めるのは率いるエンジニアが勝利を得ることによる「脳内麻薬」の経験だという。「同じ人間。メルセデスやフェラーリがやっていることができないことはない」(浅木氏)。とはいえ、航空機の技術まで巻き込んでも簡単には勝たせてくれない。それでも数百人単位で投入しているエンジニアの中から、「1人でも2人でも育ってくれれば」(同)と期待をつなぐ。
海外ではホンダが来季のF1関連予算を増やすという報道が出ているが、大幅な増額とはならないもようだ。それでも、来季は勝つチームにならないといけない。勝てないチームではフェルスタッペンのようなトップドライバーがチームを離れるためだ。今シーズンに残されたのはあと4戦。そして、シーズンオフでの開発。「無念」で終わったホームグランプリからどう巻き返すか。そこにホンダの底力が問われる。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?