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 「『ライフウェア』の考え方に対し、世界中から関心が高まっている」

 10月10日、「ユニクロ」などを展開するアパレル大手ファーストリテイリングの2019年8月期決算説明会の場で、同社の柳井正・会長兼社長はそう強調した。この期、海外ユニクロ事業では売上収益が初めて1兆円を超え、営業利益でも初めて国内ユニクロ事業の数字を上回った。19年9月にはファッションやデザインの聖地であるイタリア・ミラノに旗艦店を出店。「日本のユニクロ」から「世界のユニクロ」への脱皮を印象付けようとしている。

ファーストリテイリングの19年8月期決算説明会で「ライフウェア」の成功を強調する柳井正・会長兼社長

 柳井氏は会見のたびに「ライフウェア」の概念に言及してきた。消費者の生活ニーズに寄り添った、合理的な普段着を志向する言葉で、同社が13年に打ち出したものだ。海外ユニクロ事業の売り上げはこの前後から大きく伸長し、国内の業績が伸び悩む中で同社の成長をけん引してきた。

 「ヒートテック」などの機能性商品から、リサイクル素材を使用した環境配慮型商品に至るまで、ファーストリテイリングは自社商品をライフウェアという一つの概念にひもづけることで、他社のブランドとの差異化を図ってきた。中国を中心とした海外ユニクロ事業の成功はライフウェアというコンセプトそのものの成功だ――。そんな自信を柳井氏はあらわにする。

 同社は19年8月、雑誌『LifeWear magazine』を創刊。自社ブランドの商品や着こなしを紹介するカタログの色彩が強い内容だが、アスリートへのインタビューやベトナム・ホーチミンのシティガイドなど雑誌らしいページも多い。マガジンハウスで雑誌『POPEYE』編集長を務め、18年にファーストリテイリングに入社した木下孝浩氏が編集を担当した。日本語・英語併記で世界100万部を配布し、今後も年2回の発行を続ける計画だという。

ファーストリテイリングが19年8月に創刊した雑誌『LifeWear magazine』

 しかし、海外のすべての地域でユニクロの売り上げが好調なわけではない。以前から不振が続いていた韓国では、さらに7、8月の日本製品の不買運動の影響で売り上げが低迷し、減収減益となった。北米でも赤字が続いており、今期の収益改善は計画未達だった。海外で稼ぐアパレルを目指す以上、国際情勢や地域性、天候に売り上げを左右されるリスクは避けられない。

 そこで同社が打ち出すのがネット通販(EC)を軸としたグローバル戦略だ。東南アジア諸国を中心にEC事業の展開先を増やし、現在は12%弱にとどまるEC化率を長期的に30%まで引き上げるという目標を掲げた。そのためにグローバルで統一のEC基盤システムを自社で開発し、来年から順次導入するという。

 リアル店舗からECへと重心を移す中で、旗艦店などの店舗づくりを通じて表現してきたライフウェアの概念をいかにオンラインで伝えるかという問題は大きくなる。『LifeWear magazine』は特設サイトや米アマゾンの電子書籍「Kindle」でも閲覧可能にした。雑誌のノウハウを取り入れた販促メディアも、EC推進の布石と見るべきだろう。

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