大型で非常に強い台風19号の日本列島への接近・上陸の時が近づいている。一部のスーパーやコンビニからは水やパン、養生テープが消え、警戒感は高まるばかりだ。今回の台風の特徴は、大型である故、最大風速45m前後の暴風が長時間続く可能性があること。昨年、関西を襲った台風では、飛来物で民家の窓ガラスが割れるケースが多く、火災保険を申請した読者もいただろう。飛来物から家屋を守り、万が一窓ガラスが割れた場合にはどうすべきなのか。

「窓などの修理要請が急増するのを懸念しています」。YKK APの広報担当者は台風19号の襲来に警戒感を強める。
実際、9月に千葉県などに甚大な被害をもたらした台風15号の襲来時、記者は窓のサッシの隙間から雨水が逆流する音で深夜に目を覚ますという経験をした。強風で窓が大きく揺れ、割れるのではないかと不安になり、眠れぬ夜を過ごした。今回の台風は15号以上の大きさと威力で、長時間にわたり強烈な暴風雨が続くとされており、前回以上の恐怖に襲われることが予想される。
そもそも台風で窓が割れる被害はなぜ起こるのか。YKK APは「破損の多くは、暴風雨によって飛来物が当たった際の衝撃によるもの。強風で窓が風圧に耐えられずに割れたというケースはあまり聞いたことがない」と話す。
窓には7段階にわたる耐風圧性があり、戸建てかマンションといった建物のタイプや、高さによって、使われる窓の耐風圧性は異なる。YKK APによると、一般的に低層の戸建てでは風速51メートルぐらい、上空で風圧が強まるマンションでは風速62~76メートルぐらいの強風に耐えられるような耐風圧性を持った窓を採用していることが多いという。ただこうした耐風圧性は、飛来物による衝撃は計算に含まれていない。
そのため、台風から自宅の窓を守るためには、飛来物による被害を最小化する取り組みが必要だ。戸建てなら窓の外側にベニヤ板を打ち付けたり、シャッターを下ろしたりと、窓の外側を守ることで、飛来物による破損を防ぐことができる。
しかし、マンションの場合は、戸建てのような対策を取るのは難しい。そのため、できる対策は、万が一飛来物が当たったときに室内にガラスが飛散するのを防ぐぐらいになってしまう。ネットやテレビ番組では養生テープや段ボールで飛散を防ぐ方法が紹介されているが、すでに養生テープは売り切れる店舗が出ている。そのため、YKK APは「カーテンをしっかり閉めてほしい。万が一、割れても、カーテンが衝撃を受け止めて、ガラスが下に落ちる。室内に散らばるのを防ぐ対策になる」と話す。
また、記者のように窓のサッシから雨水が逆流したという経験を持つ人もいるだろう。YKK APによると、窓には雨水を下に排出する穴が設けられているものがあるが、風や雨の勢いが強いと、逆流する可能性があるという。この場合は、穴を防ぐようにサッシのすきまに布などを押し込むことで逆流を防ぐことが可能だ。YKK APは同社のサイトやフェイスブックで台風の被害から自宅を守る方法を紹介している。
こうした対策を取っても、飛来物で窓が割れてしまうリスクはある。その場合、修理から火災保険の申請までどのような手続きを踏めばよいのか。
「できれば割れた直後に写真を撮影し、加入している保険会社に連絡してください」。そう話すのは損保ジャパン日本興亜の広報部。撮影をする際は、被害を受けた建物や家財の全体と、損害箇所が確認できる写真があると有効だ。保険会社に提出する方法を考慮すると、動画よりも静止画の方がいいという。
加入している保険のサービス内容にもよるが、多くは修理業者の手配を個人で行わなければならない。マンションでは、管理会社があらかじめ指定した修理業者がいる場合もある。
その後、修理業者が現状確認と見積もりに来るが、この時に注意すべきことがあるという。「業者が台風の被害箇所だけでなく、経年劣化の箇所なども修理しようと提案することがあるが、保険金を支払うことができるのは、台風による被害の修理にかかった金額だけです」(損保ジャパン日本興亜)。
被害状況の写真と、見積金額がそろったら、保険会社から送られてきた申請書類とともに返送をする。ここから保険会社が保険金を支払えるかどうかの審査に入るが、大型台風のような甚大な被害が発生するケースは、大量の申請が押し寄せ、審査に時間がかかる場合もある。保険金で賄える金額内に修理費用を抑えたい場合を除き、一刻も早く修理をしたいなら、保険会社からの審査の連絡を待たずに修理を始めることも可能だという。
保険証券を紛失していても、保険金の支払いに支障はない。家屋の流失や焼失などで、「どこの保険会社に加入したか分からない」という場合、災害救助法が適用された地域では、日本損害保険協会が提供する「自然災害等損保契約照会センター」で加入保険会社を確認することができる。
12日から13日にかけて列島に襲来する台風19号。できうる限りの対策をして、被害による生活への悪影響を最小限にとどめる備えが欠かせない。
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