
ラグビーW杯を主催しているワールドラグビー(WR)と大会組織委員会は大型で猛烈な台風19号の到来に備え、12日に開催される2試合を中止にすると発表した。13日の試合については、当日朝までに判断する。組織委はチケット代を全額返却する方針で、2試合中止による損失は20億円近くになるもよう。ただ、台風など悪天候を想定して入っていた保険が効き、経済的な影響はそれほどないのだという。
ラグビーW杯は日本代表の躍進もあって、大変な盛り上がりを見せている。組織委は今月4日に、販売予定総数182万枚の観戦チケットのうち180万枚がすでに売れたと発表した。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「大会の経済効果は組織委が試算している4300億円強からさらに上乗せされる可能性がある」と指摘する。
その順風満帆ムードに水を差したのが、この時期としては異例の破壊力を持つ台風19号だ。WRと組織委は気象情報のウェザーニューズの協力などを得て熟考した結果、12日に行われるニュージーランド対イタリア戦、イングランド対フランス戦の2試合を中止とした。開催地や日程の変更をするとその後の試合の日程管理が難しくなるという判断だ。
試合が中止となった各チームには大会規則通り、引き分け扱いとして勝ち点2が付与される。これによりイタリアは1次リーグ敗退が決定。イングランドとフランスのグループでの順位も確定した。この2試合はいずれも、世界的に高い視聴率が期待できる試合で、10日の記者会見では一部海外メディアから「台風シーズンの日本での開催に後悔はないのか」といった恨み節も聞こえた。
中止となれば、気にかかるのは運営サイドのお財布事情だ。組織委は630億円と見積もる大会予算の5割超の350億円をチケット販売に依存している。2試合のキャンセルによって単純計算で、20億円近い損失が出ることが想定される。ただ「中止になっても一定割合はカバーされる」(組織委)。ここで頼れるのは「興行中止保険」という存在だ。
組織委が保険会社との間で結んでいる保険契約の詳細は明らかにされていない。ただ、偶然の事由でイベントが中止になった場合に、支出費用から主催者側が自己負担する額を引いた額の最大90%を保険会社が支払うのが興行中止保険の一般的な仕組みだ。例えば、損保ジャパン日本興亜がある国際テニス大会で運営側と結んだ契約内容は、悪天候などで大会が全く行われない場合、費用の80%にあたる4824万円を支払うというもので、保険料は2日間で245万円だった。
関東地域を台風が通り過ぎた後と予想される13日の夜には、日本代表にとって大一番のスコットランド戦が開催される予定。運営側は「すべての努力を尽くして予定通り実施したい」(WR幹部)というスタンスで、開催するかしないかを当日朝までに決めるとしている。日本としてはスコットランドに勝って、4連勝で決勝進出というのが理想だ。
とはいえ、日本は現在、勝ち点14でA組トップ。12日に予定されるアイルランド対サモア戦でアイルランドが勝っても負けても、スコットランド戦が中止となれば、初の決勝トーナメントに進むことができる。スコットランドは欧州の強豪で日本が過去に辛酸をなめさせられてきた相手だけに、複雑な心境でいる関係者も少なくないかもしれない。
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