化粧品大手のポーラは10月9日、シワ改善化粧品「リンクルショットジオセラム」(税込み価格1万1000円)を2020年1月1日に発売すると発表した。同製品は国内で初めてシワ改善効果の表示を認められたシワ改善化粧品「リンクルショットメディカルセラム」に続く「リンクルショット」ブランドの第2弾商品となる。「シワの改善」をうたった第1弾とは異なり、表情を動かした際に目元や口元などに一時的にできる小じわが表れにくくする独自成分を配合しているという。

2017年1月に発売されたメディカルセラムはシワ改善化粧品の先駆者として、国内の消費者のみならず、中国人を中心とするインバウンド(訪日外国人)からの人気も高かった。発売初年度の売り上げは約130億円。2017年12月期の「POLA」ブランド全体の売上高は1440億円だったので、1割近くをメディカルセラムだけでたたき出したことになる。
メディカルセラムの売上高約130億円のうちインバウンドによる購入の割合は17%。2017年12月期のポーラ・オルビスホールディングス連結売上高に占めるインバウンド関連の割合は約7%だったので、同商品がいかに中国人の支持を集めていたのかが分かる。銀座の店舗では一時、「開店前から商品を求める中国人とみられる顧客が長蛇の列をなし、何本も買い求めていた」(同社広報)。
18年12月期までは「インバウンドバブル」もあり、増収営業増益が続いていたポーラ・オルビスHDだったが、19年1~6月期は一転して営業利益が前年同期比29.7%減となった。原因は19年1月に中国政府が、個人が日本で購入した商品をネット通販サイトやSNSで売りさばく「代購(代理購入)」ビジネスを取り締まる「電子商取引(EC)法」を施行したこと。代購目的の観光客への販売は激減し、インバウンドに人気を集めていた基幹ブランド、POLAの1~6月期の売り上げは78億円減の687億円に終わった。
ポーラは40代以上を主なターゲットとしていたメディカルセラムに続き、新たに20代後半から30代の若年層もターゲットにしたジオセラムを開発。シワ改善化粧品の先駆者として再びヒットを狙うが、前回のような人気を得るのは容易ではない。
まず、売り上げに大きく寄与したインバウンドにかつてのような購買力は期待できないだろう。EC法が施行されて以降、資生堂など一部を除く化粧品・日用品メーカーのインバウンド関連の売り上げは減少傾向にある。また、先駆者として市場を席巻した17年とは異なり、現在は資生堂やコーセー、花王など競合他社も「シワ改善」をうたう製品をそろえている。
商品企画部部長を務める山口裕絵執行役員は「2017年とは市場の状況も異なり、前ほどうまみがないのは事実だが、若年層を中心とした新規顧客を獲得するキラーアイテムに育てたい」と語る。社運をかけた新商品はどこまで業績の回復に寄与できるか。
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