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 ホテルや不動産を手掛けるユニゾホールディングスの買収合戦が混とんとしてきた。ユニゾはエイチ・アイ・エス(HIS)による敵対的TOB(株式公開買い付け)に対抗すべく、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループをホワイトナイト(白馬の騎士)として連れてきた。しかし9月末にユニゾは、HISを撃退できたから用済みとばかり、フォートレスにも三くだり半を突き付けた。この行為に激怒したのがユニゾの筆頭株主、米エリオット・マネジメントだ。

ポール・シンガー氏が率いるエリオットは「最恐投資家」として知られる(写真:Bloomberg /Getty Images)

 エリオットと言えば世界で最も有名な「アクティビスト(物言う株主)」の一つ。米著名アクティビストのポール・シンガー氏が率い、アクティビストの本場、米国ですら「最恐投資家」として恐れられる存在だ。そのエリオットはHISがユニゾへの敵対的TOBを発表した後にユニゾ株を買い始め、今では13%強のユニゾ株を持つ。そのエリオットが10月9日、動いた。ユニゾの取締役会に対して抗議の書簡(公開質問状)を送付したのだ。

 エリオットの書簡を要約すると以下の2点になる。

 「企業価値において従業員の処遇などを優先するからフォートレスの提案には賛成しかねるというが、HISからのTOB提案時を含め、それまでに従業員の処遇を優先していた場面などないのではないか。フォートレスを追い出すための後付けの方便ではないか」

 「米国不動産の大半を売却し、その資金でユニゾ従業員等出資の会社がTOB後のフォートレスから株を買い取るという計画を提案したといきなり発表したが、唐突すぎるし、いったいユニゾ従業員等出資の会社とは誰が出資するのか。著しい利益相反の恐れがあるのではないか」

 エリオットはユニゾ株がフォートレスのTOB価格(1株4000円)を超えても買い増していたため、フォートレスのTOBに応じるとは考えにくい。つまり特段、フォートレスの味方というわけでもなさそうだ。しかしさすがに今回のユニゾの対応には腹が据えかねたのだろう。

 M&A関係者の多くが「ユニゾの小崎哲資社長が、自らの独立経営を保つためにホワイトナイトを裏切るという禁じ手を繰り出した」と解釈した今回の一件。エリオットと同様の不平不満はユニゾのほかの株主の間でも渦巻いており、エリオットが株主を代表してまずは苦情を申し立てた格好だ。

 HIS関係者も「我々のTOBの時には従業員が大事などという言葉は聞かなかった。今更感しかない」と首をかしげる。加えてフォートレスも、またフォートレスより高値で買収提案した(ユニゾは拒否)と言われる米ファンドのブラックストーン・グループも、従業員に一定のインセンティブを与えるなどの譲歩を示していたとされる。「フォートレスに買われてもブラックストーンに買われても、何もしていなかったユニゾ時代より従業員の権利は増すはず」(フォートレスの交渉関係者)とあきれた声が上がる。

 要するに株主の不満は「これまで従業員が大事なんて全く言ってこなかったし実行もしてこなかったくせに、フォートレスを追い出すためだけに後付けで持ち出してきたのが見え見え」というわけだ。

 ユニゾが9月末に発表した「買収提案に対する対応の基本方針」からもその本音は透けて見えるという声が上がる。ユニゾは、買収を提案しているファンドと合意するには「買収提案者の取り分と出口(ファンドによる株式売却)の時期・方法を合意書に明記し、出口の時期・方法を従業員会社が選択できる」ことを具体案として掲げている。

 これに対してある外資系投資ファンドの首脳は「こんな条件は聞いたことも見たこともないし、これではファンドは投資できない。はなから無理難題を言って、誰も入ってこないようにしたいのだろう」と指摘する。

 株式市場関係者も「このままでは日本企業のお行儀の悪さだけが世界に広まってしまう」と眉をひそめる事態は、今後どうなるのか。

 エリオットは過去、アクティビストとして米アルミ大手アルコニックのCEO(最高経営責任者)を辞任に追い込んだ実績もある。今回は抗議の書簡で済んだが、この先の対応次第ではエリオットの動きがより激しくなる可能性はある。筆頭株主としてキャスチングボートを握っているといっても過言ではない彼らを怒らせた代償は高くつくかもしれない。

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