全1022文字
(写真:PIXTA)

 厚生労働省が8日発表した8月の勤労統計速報値によると、月間給与総額は27万6000円あまりと前年同月に比べ0.2%減少した。消費者物価指数を考慮した実質賃金では0.6%減と、今年に入ってから8カ月連続でマイナスになっている。

 同省によると「夏の賞与が減少した」ことが給与の減少の背景にあるという。賞与(ボーナス)など「特別に支払われた給与」は11.4%減だった。日本経済新聞社のボーナス調査でも夏のボーナスは7年ぶりの減少となった。

 一方、8月の「所定内給与」と残業代などの「所定外給与」はいずれもプラスだった。「所定外給与」に関しては、今年に入ってから1%以上のマイナスとなった月が4回あった。企業が働き方改革を進めたことにより、残業代の減少で給与総額が減ったとの声もあるが、8月の統計からはこうした構図は見られなかった。

 最近の日本企業の動きを見ると、給与総額が賞与に左右される状況は今後も続きそうだ。日本企業全体で見れば、賞与の増額を後押しする利益水準は頭打ちになっている。日経新聞によると、日本企業全体の19年3月期の純利益は前の期比で減益だ。これに伴う賞与の減少が今回の統計に反映された形だ。20年3月期に増益を見込むが、米中貿易摩擦などの影響を考えれば不透明さがなお残る。

 夏のボーナスに関しては、前期に営業増益だったトヨタ自動車が管理職以上のボーナスを減額することを決めて話題となった。「トヨタが大丈夫だという慢心を取り除く」(豊田章男社長)狙いだが、増益でもボーナスが減る現実は「正直こたえる」(トヨタ幹部)との声が聞かれる。

 今回は賞与の減少が響いた給与の減少。賞与以外の部分で増えることに期待がかかるが、「すでに大企業では働き方改革のために総労働時間を減らしている」(第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト)といい、毎月の給与自体はそう増えないだろう。

 物価がじわりと上がる中、10月には消費税率が10%に上がり、家計の負担は増した。こうした状況で給与総額が伸びなければ、景気への影響も懸念される。その影響を最小限にするには企業が利益水準を高め、従業員への配分を増やしていくことが欠かせない。

タグ「1分解説」をフォローしませんか

旬の話題やニュースを分かりやすく手短に解説。フォロー機能を設定すると、「1分解説」タグが付いた記事が配信されると画面上で通知されます。「#1分解説」でフォロー機能を設定できます。