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 企業が服装を自由化しても、何を着ていいか分からない──。そんな人に新たに提案するのは、一周回って“スーツ”だった。

 紳士服大手のAOKIは10月8日、今後の主力として位置付ける「セットアップ」型の新商品を発表した。企業が服装の自由化に向かう中で、何を着ればいいか分からない層からのニーズが強いと判断。カジュアル過ぎない新しいスタイルを定着させるべく、販促を強化する。

AOKIの新商品。中央はAOKIホールディングスの青木彰宏社長

 発表した新商品は、一見すると従来のスーツそのもの(上の写真を参照)。ジャケットとパンツを別々に選んで組み合わせるセットアップ型の商品だが、上下の色を合わせれば伝統的なスーツのように見える。シャツの上に着ればスーツスタイルに、Tシャツやニットの上にカジュアルに羽織ることもできる。ジャケットは1万9900円、パンツは7990円(いずれも税別)。帝人フロンティアの伸縮性の高い素材「SOLOTEX(ソロテックス)」を使用し、動きやすさも重視した。

 クールビズに加えて、秋冬でも企業が服装の自由化を進める中で、スーツの需要は失われつつある。AOKIホールディングス(HD)の青木彰宏社長によれば「団塊世代の引退などの影響もあり、メンズスーツの市場は2015年が山だった」と語る。

 スーツの需要が失われる中で、なぜこのような商品を発表したのか。AOKIが、「職場での服装自由化」について大企業の社員40人に対してヒアリングしたところ、見えてきたのは意外なニーズだった。

 「自由と言われ、何を着ていけばよいか分からなくなった」(40代男性)、「様子見のためにスーツで通勤した」(40代男性)などの困惑の声が多く上がった。「自由化で服装選びに悩んでいる。何を着ればいいか分からないという新しいニーズが生まれている。AOKIにとっては提案のチャンスだ」と青木社長は語る。

 ヒアリングでは「カジュアル過ぎるものは避けたい」「失礼のない格好がしたい」など、自由化以降もフォーマルな服装を引き続き求める声も多かった。そこでAOKIは、「『きちんと感のある軽装化したビジネススタイル』がこれからのスタンダードになる」(青木社長)とにらみ、セットアップ型に注力することを決めた。

  AOKIはスーツ需要の減少分をカバーすべく、個人によるカスタマイズ性や女性服の強化などに取り組んできた。月額7800円(税別)でスーツやシャツなどを借りられるサブスクリプションサービスも始めたが、参入からわずか半年後の2018年11月に撤退を決定。今後の事業の軸を探していた。

 スーツから解き放たれて自由になるはずが、一周回ってスーツに戻る──。AOKIの提案から、そんな流れも見てとれる。AOKIの発表は、新商品というより、服装自由化で着る服に困っている層に対して「新しいスタイル」を提案していると見るべきだろう。

 発表したセットアップは旗艦店10店舗で発売する。既製スーツ売り場を縮小し、セットアップの売り場を拡大する方針だ。2021年3月期までには、全国約650店で同様に売り場を拡大する。AOKIはセットアップの売り上げを90億円から今後3~5年で200億円に増やすとしている。

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