「11年ぶりに大きな損失を発表しなければならなくなった」

 アパレル大手のオンワードホールディングスの保元道宣社長は、10月7日に開かれた19年3~8月期の決算説明会でそう語った。同期の純利益は244億円の赤字。リーマン・ショックの影響で通期で308億円の最終赤字となった09年2月期に匹敵する規模の損失だ。

 最終赤字の原因は、不採算事業の廃止などにかかる252億円の特別損失。これまで百貨店を中心に国内外で3000店舗を展開してきたが、不採算店舗の閉店を急いでいる。保元社長は具体的な閉鎖店舗数を明らかにしていないが、日本経済新聞などは国内外3000店舗のうち2割を占める約600店を閉めると報じている。また、「オープニングセレモニー」および「フィールドドリーム」の2ブランドに加え、不振が続いていた韓国事業からの撤退も発表した。

 「米中摩擦、ブレグジット、中東情勢といった世界的な下振れ要因が、ただでさえ競争が激化している衣料品市場をさらに厳しくしている。オンワードが続けてきたビジネスを大きく転換せざるを得ない」。保元社長は海外事業での苦戦についてそう語った。中期経営計画の最終年度である22年2月期までに構造改革にめどをつけるという。同計画では営業利益100億円が目標だが、この数年の実績は50億円前後で横ばいの状態だ。

10月7日の決算説明会で説明するオンワードホールディングスの保元道宣社長
10月7日の決算説明会で説明するオンワードホールディングスの保元道宣社長

 窮地に追い込まれつつあるオンワードが打ち出す成長戦略は、EC(ネット通販)を軸としたデジタル活用に加え、17年の開始以来好調のオーダースーツブランド「カシヤマ ザ・スマートテーラー」が代表するカスタマイズ分野、今年買収したカタログギフト大手・大和を含むライフスタイル分野の3本柱。中でもEC強化に関しては、19年2月期実績で255億円のEC売上高を22年2月期までに500億円に倍増する計画を掲げた。

 「ECを前提としてサプライチェーン全体を組み立てるのが令和のスタンダードになる」。保元社長はそう語り、物流へのRFID導入をはじめとしたIoT(モノのインターネット)や、AI(人工知能)の活用に意欲を見せた。ファッションに精通した自社社員が動画で商品を紹介するなど、オンラインでも「顔の見えるEC」を模索するという。「70~80%の自前主義とし、自分たちにはない技術を持つデジタル企業とも組んでいく」(保元社長)

 これまで百貨店を中心に築いてきた物理的な店舗網を絞り込み、ECに活路を見いだすオンワード。EC売上高の85%が自社EC経由のため、外部のモール型ECに依存している企業に比べると、オンライン顧客接点の強化に投資する効果は高そうだ。しかし、その道を選べばヤフー傘下に入ったZOZOなどネット専業の強敵との競争は激化する。

 同じく百貨店との関係が深いアパレル大手・三陽商会も、20年2月期は15億円を投じてIT活用によるサプライチェーンや店舗の改善に取り組み、新ブランドも次々打ち出している。しかし当初は黒字計画だった19年1~6月期の実績は、8億円の営業赤字となった。百貨店販路が急速に沈下する中、老舗アパレルが打ち出すデジタル改革が「間に合う」かどうかは不透明だ。

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