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(写真:共同通信)

 再生医療製品を日本に普及させるため、厚生労働省による従来の規制が大きく変化したのは2014年のことだ。薬事法を改正した医薬品医療機器等法(薬機法)と、再生医療等安全性確保法(再生医療新法)という新しい法律が施行され、業界では「再生医療元年」といわれた。それから5年。再生医療新法に基づく新しいバイオベンチャーが10月28日に東証マザーズに上場することが決まった。

 上場するのはセルソース。住友商事に勤務していた裙本理人社長が2015年11月に設立した。再生医療に関する医療機関からの細胞加工などの受託と、化粧品などの開発・販売を手掛けている。

 クリニックなどががんの免疫細胞治療や美容目的の脂肪細胞移植などを行うことは以前から可能だったが、患者から採取した細胞を培養したり、試薬などを用いて生理活性物質を多く分泌するように加工したりという処理は、全て院内で実施しなければならなかった。ところが2014年の再生医療新法の施行により、許可を受けた施設は医療機関から細胞の培養や加工を受託できるようになった。

 これに着目して創業したのがセルソースだ。大株主には美容クリニックの経営者が名を連ねており、豊富な業界知識を基にビジネスモデルを構築してきたと推察される。

 同社が現在焦点を当てているのは変形性膝関節症という疾患だ。膝の軟骨がすり減った結果、膝が痛んだり、曲げ伸ばしがしにくくなったりするといった症状が生じる。この変形性膝関節症に対して、多血小板血漿(PRP)療法という治療を自由診療で提供する整形外科クリニックが増えている。

 セルソースがクリニックからの受託で実施しているのは、このPRPの改良版だ。PRP療法は、血液から血小板を多く含む血漿を分離して患者に戻す治療法で、PRPを抽出するための医療機器も販売されている。セルソースでは、医療機関で採取された患者の血液を預かり、PRPをさらに加工して凍結乾燥して医療機関に戻す。同社がPFC-FDと名付けている凍結乾燥した血液由来加工品は、医療機関において常温で長期間保存できるという利点がある。また、医療機関で採取した患者の脂肪組織から、幹細胞を抽出して、培養、加工し医療機関に戻す受託事業も実施している。

 PFC-FDも、脂肪由来細胞も、加工の受託件数は右肩上がりで伸びており、PFC-FDはこれまでに5000件以上、脂肪由来細胞は1200件以上提供してきた。同社と提携する医療機関も増加傾向にあり、現在、237件と契約している。医療機関が患者に提示する価格は自由診療なのでまちまちだが、「PFC-FDの場合は15万円から30万円、脂肪由来細胞の場合は80万円から130万円程度」(裙本社長)だという。