NTTが4.3兆円を投じてNTTドコモを完全子会社化する。ドコモがNTTから携帯電話事業を継いだのが1992年。今回の完全子会社化はそれから28年後の再結集となる。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)なども一体化し、法人向けビジネスを強化する。政府が目指す携帯料金値下げに応えつつ、グループ力で次世代通信「6G」で世界の覇権を狙う。

NTTの沢田社長(左)はグループの再結集で国内外のビジネス強化を狙うと語った
NTTの沢田社長(左)はグループの再結集で国内外のビジネス強化を狙うと語った

 NTTが、NTTドコモを完全子会社化し、99年の持ち株・分社化に次ぐ大幅なグループ再編に乗り出す。すでに66.21%出資しているが、残りを1株3900円でTOB(株式公開買い付け)する。総額4.3兆円の大規模TOBとなる。

 同時にドコモの社長交代も発表された。92年のエヌ・ティ・ティ移動通信網(現在のドコモ)発足時から一貫して携帯電話事業に関わってきた吉沢和弘社長が2020年12月1日付で退任。後任として、6月に持ち株の副社長からドコモの副社長として送り込まれたばかりの井伊基之氏が社長に就任する。

 持ち株と戦略を一本化し、意思決定を迅速化させる狙いだ。その上で、持ち株の沢田純社長は「具体的な時期は未定だが、NTTコムとNTTコムウェアをドコモに移管することを検討しており、連携を強化する」と述べた。

 NTTコムは99年にNTTの長距離(県外)通信・国際通信を引き継いで発足したが、20年3月期の決算では、売上高に占める音声通話の比率は2割程度まで低下。インターネット通信、法人向けのソリューションやクラウドサービスが中心の会社になっている。NTTコムウェアはNTTグループ内外のシステム構築を担当する。両社の売上高は1兆円を超え、「ドコモと合わせると6兆円規模になる」(沢田社長)。

 大規模なグループ再編に乗り出す背景には、ドコモ単独では将来像を描きにくくなっていたことがある。ドコモはNTTグループ全体の20年3月期の売上高の39%(4兆6513億円)、営業利益の55%(8547億円)を稼ぎ出す中核企業。しかし20年3月期は携帯料金の引き下げでドコモが1590億円の営業減益となったため、NTTグループ全体でもそのぶんを補えずに1317億円の営業減益となっている。会見で沢田社長は何度も「携帯電話事業でシェアはトップだが、収益性は(KDDI、ソフトバンクに次ぐ)3番手だ」と危機感を口にした。

 では、ドコモとNTTコム、コムウェアが一体になることで、どのような反転攻勢が描けるのか。

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