野村総合研究所は9月26日、クレジットカード会社や家電量販店、携帯電話会社など国内11業界の主要企業が2018年度に発行したポイント総額が、初めて1兆円を超えたとの推計を発表した。消費者の囲い込みや経済圏形成に有効な手段として順調に規模を伸ばしてきた一方、ポイント事業者同士の「還元率競争」は激しさを増す。消耗戦を抜けだし、還元に頼らないポイントの良さを示せるかどうかが、勝負を分けそうだ。

(写真:PIXTA)
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 推計額は前年度比6.4%増の1兆21億円で、05年度の約4500億円と比べると倍以上に膨らんだ。発行事業者やポイント制度に加盟する小売店、利用者が増え、ポイントの還元対象となる売上高も伸びる好循環が続いた。近年は1つの加盟店が複数のポイントプログラムに参加する「相乗り」現象も起きており、今後もポイント発行額は伸びていくとみられる。

 推計の対象は、クレジットカード、家電量販店、携帯電話、航空、ガソリンスタンド、インターネット通販、コンビニエンスストア、総合スーパー、ドラッグストア、百貨店、外食の11業界。主要企業の売上高(マイルは旅客数)にポイント還元率などを掛け合わせ、現金に換算した。

 最高はクレジットカード業界で前年度比14.2%増の3334億円。家電量販店が3.1%減の2041億円、携帯電話が1.1%増の1189億円と続き、3業界で全体の約3分の2を占めた。

 ポイントプログラムの先駆けは、家電量販大手ヨドバシカメラが1980年代に発行したポイントカードだ。2003年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がお店と企業の垣根を越えて使える共通ポイント「Tポイント」を発行すると、三菱商事系の「ポンタ」、楽天の「楽天スーパーポイント」、NTTドコモの「dポイント」が追随。特に楽天とドコモは、EC(インターネット通販)や携帯電話事業の稼ぎを原資に加盟店の拡大攻勢を仕掛け、「Tポイントから楽天やドコモのポイントに乗り換える店舗が少なくない」(関係者)という。

 ポイント競争をさらに激しくしているのが、スマートフォン決済事業者の「還元祭」だ。消費税増税に伴うキャッシュレス・ポイント還元制度に合わせて、20%程度と高い還元策を次々と打ち出している。既存のクレジットカード会社や、ポイント事業者も還元率を上げるなど対抗策に出ている。

 企業体力を競うような消耗戦の果てに、ポイント業者の淘汰が進めば、どうなるのか。ポイントは、買い物に役立つといえども、あくまで企業が付与する「おまけ」だ。企業は基本的にポイントプログラムの廃止を利用者の了承なしに決められる。

 08年に発表した経済産業省のガイドラインは、企業が消費者保護に自主的に取り組むことにより、トラブルが減少することを期待するとしており、消費者がためたポイントをどう取り扱うかは、あくまで企業の「良心」に委ねられている。

 一時は届け出や登録、発行ポイントの裏付けとなる供託義務のような規制も検討したが、「運営コストを高め、関連ビジネスの縮小や消費者利便性の低下につながる恐れがある」(ガイドライン)と判断した。

 ただ、生活に根ざすポイントは、消費者にとってますます「お金」の位置づけに近づいている。最近はポイントの運用や、ポイント同士を交換できるサービスも増えるなど、金融商品の性格も増している。現状は有効なマーケティングの手段として、大きなポイントの廃止はみられないが、競争激化の果てに撤退が相次げば、消費者の期待を大きく裏切ることになりかねない。