不動産やホテルを手掛けるユニゾホールディングス(HD)が米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループのTOB(株式公開買い付け)への態度を「賛成」から「留保」に変更した。エイチ・アイ・エス(HIS)の敵対的TOBに対抗するために探し出したホワイトナイト(白馬の騎士)のフォートレスを振った格好だ。「救世主」をも袖にするという驚きの対応からは、なんとか独立経営を貫き通したいという経営陣の本音がにじむ。

敵対的TOBをしかけたエイチ・アイ・エス(HIS)はすでに撤退
敵対的TOBをしかけたエイチ・アイ・エス(HIS)はすでに撤退
 

 「これはずるい。海外でもこんなのはなかなか見たことがない」(外資系投資銀行幹部)。9月27日のユニゾの発表にはM&A(合併・買収)関係者も驚きを隠せない。

 そもそもの始まりはHISだった。ユニゾが水面下での提携協議に応じてくれないとして、7月、突如1株3100円のTOBで株を45%まで買い増すと発表。これにユニゾが反発し、敵対的TOBに発展した。

 その後、ユニゾがHISに対抗するためホワイトナイトとして連れてきたのがフォートレスだ。フォートレスは全株取得を目指し1株4000円でTOBを開始、ユニゾはフォートレスのTOBには賛成を表明していた。HISはTOB価格はこれ以上上げられないとして、ユニゾ争奪戦から手を引いた経緯がある。

 今回のユニゾの態度変更を、多くの関係者がこう受け止めている。HISという敵を撃退するためにフォートレスを呼んだものの、その目的を達成したから、用済みとばかりに切り捨てる──。

 ユニゾがHISに対抗するために、フォートレスを仕方なく呼んだ面は確かにありそうだ。ユニゾの小崎哲資社長は、自らの出身母体でもあるみずほフィナンシャルグループ関係者からも「独立心が旺盛で人にとやかく言われるのが嫌い。本来は後ろ盾のはずの我々の言うことすら全然聞かなくて閉口していた」と言われる人物だ。

 ユニゾはフォートレスではない別の投資ファンドからも1株5000円での買収提案を受けたが、「従業員を保護する仕組みが十分ではない」との理由で断ったことも発表した。ちなみにフォートレスへの賛成を取り消した理由は「(別のファンドからの提案があった)1株5000円までTOB価格を引き上げるよう要請したが回答がない」「一部事業や資産を切り離したうえで、当社を実質的に解体することを視野に入れている可能性を否定していない」「従業員の雇用及び労働条件が維持されない可能性がある」などとしている。

 もっとも、この説明も説得力を欠く。ファンドに完全買収される以上、資産売却などの可能性があるのは当初からわかっているはず。ファンドはいずれ株をより高い値段で売却するために企業価値を高める何らかの手を打ってくるからだ。

 雇用の維持を譲れない条件と掲げたことにも一貫性がない。HIS関係者が明かす。「我々は、ユニゾの経営の独立性を保証すると回答してきた。ユニゾの従業員削減や、労働条件や労働環境の変更も想定していない、と言ってきた。そうした我々を全く相手にしなかったのに、雇用維持を唱えるとは。矛盾している」

 こうしたことから、「とにかく買収されたくないために、いろんな理由を持ち出してきた」(外資系投資ファンド首脳)と解釈されるのも仕方がないだろう。

 今後の展開はどうなるのか。足元の株価はフォートレスのTOB価格を大きく超えて推移しているため、このままでは10月7日が最終日のフォートレスによるTOBの不成立は確実。では仮にフォートレスがTOB価格を引き上げたらどうなるのか。提案の中身が同じではないため単純比較はできないが、第三者による1株5000円での買収提案を拒否したことを考慮すると、フォートレスも「TOBを成立させたいなら1株5000円以上に引き上げるしかない」との見方が株式市場関係者には広がっている。実際、30日のユニゾ株は前日比6.76%高の4815円と急上昇した。

 しかもユニゾは資産の切り売りや雇用が守られないリスクを盾に、フォートレスがTOB価格を5000円以上に引き上げたら再び賛成するという言質も与えていない。こうした一連の出方は、「このままフォートレスのTOBが失敗しても全く構いませんよ」と言っているに等しい。

 HISから始まったTOB合戦。「大山鳴動し」たあげく、最終的に以前と何も変わらぬ独立経営が続く、という思わぬ方向に向かう可能性が出てきた。

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