一方、増税後に期間限定値下げやポイントの還元キャンペーンを打ち出すことで、客離れを防ごうという戦略をとる外食大手もある。

 牛丼大手の吉野家は10月1日から15日15時まで、牛丼や牛皿全品を10%引きの価格で提供するキャンペーンを実施する。同社は政府が主導するポイント還元制度への参加を春先には表明していたものの「(増税までに)システム改修などが間に合わない」ことから一転して不参加を決めた。「キャッシュレス還元に参加できなかったこともあるし、キャンペーンで顧客にアピールしたい」と広報担当者は狙いを語る。

 吉野家ホールディングスは2019年2月期に60億円の最終赤字に転落したが、3月以降は牛丼の新サイズ「超特盛」や期間限定で販売した「特撰すきやき重」などの新商品のヒットもあり、吉野家の既存店売上高は6カ月連続で前年を上回っている。「(10月の)初動は重要だ」(同社)と、現在の勢いを止めないよう気を引き締めている。

 中華料理チェーンの日高屋は、豚肉を増量してリニューアルした餃子(税込み230円)を10月の1カ月間限定で同170円に値下げする。日高屋は10月以降も主力商品の「中華そば」や「生ビール」の価格を据え置くことを明らかにしている。「価格の維持は正直厳しいが、その分客数が伸びてくれればカバーはできる」(同社)。利益を削ってでも、顧客を囲い込もうという覚悟がうかがえる。

 セブン&アイ・フードシステムズが運営するファミリーレストラン「デニーズ」は、10月の1カ月間限定で電子マネー「nanaco」で支払いをすればポイントが5倍となるキャンペーンを実施する。同社の担当者は「うちは直営店なので、ポイント還元制度の対象ではないが、客足を伸ばすためにもキャンペーンは必要」と話す。

「デニーズ」は電子マネー「nanaco」のポイントが5倍になるキャンペーンを打つ
「デニーズ」は電子マネー「nanaco」のポイントが5倍になるキャンペーンを打つ

 好評であればキャンペーンの延長も検討するという。同社は「ミートスパゲッティ」(税込み754円)や和風ハンバーグ(同)といった定番メニューの7品目については税込み価格を維持すると発表している。パスタは原料の小麦を契約農家との取引とすることでコストダウンを図るという。

 「増税後はまず外食が節約の対象になるだろう」(リンガーハット)、「顧客の財布のひもはますます固くなる」(マクドナルド)など、外食各社は増税後に客足が伸び悩むことへの危機感を強めている。消費税が5%から8%に引き上げられた14年も、外食では軒並み客数が伸び悩んだ。ある外食大手の関係者は「正直、何をすれば客足が鈍化しないか誰も予想がつかない。しかも今回は複数税率にポイント還元といろいろ煩雑だ。どの企業も対応には苦慮していると思う」と心情を吐露する。10月以降は持ち帰りの場合、税率が8%のままとなることもあり、「同業他社だけでなく中食やコンビニもライバルになってくる」(別の外食大手関係者)との見方もある。外食各社による必死の顧客引き留め策は功を奏するのだろうか。

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