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 ITサービスのカヤックは26日、神奈川県と、SDGsの取り組みを実現するため、「SDGsつながりポイントシステム」という新たな仕組みを構築すると発表した。

 SDGsとは、持続可能な開発を実現するためのグローバル目標。貧困や飢餓の撲滅、健康と福祉の拡大など、世界を変えることを目的にした17の目標からなる。神奈川県は都道府県の中で唯一、SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業に選定されている。SDGsを推し進めるインセンティブとしてポイントに着目した。

 今回、ポイントシステムとして採用したのは、鎌倉市に本拠を置くITサービス企業、カヤックのコミュニティー通貨サービス「まちのコイン」だ。カヤックは2018年8月から、主に地方自治体向けに地域で利用可能なコミュニティー通貨の開発を進めていた。神奈川県はその第1号となる。今後はカヤックのお膝元である鎌倉市のほか、小田原市など神奈川県下の自治体、北海道下川町や福岡県八女市などでも導入される予定だ(日経ビジネス9月30日号の特集で詳述予定)。

「まちのコイン」のスマホ画面。各自治体向けにカスタマイズされる

 まちのコインの特徴をひと言で言えば、人と人とのつながりが増えるように設計されていることだ。

 細かな運用はそれぞれの自治体次第だが、海岸の清掃や果物の収穫といったボランティアに参加したり、地元のたこ焼き屋に友人を連れて行ったりするなど、地域のつながりが増えるような行動を取った人にコミュニティー通貨を付与するというのが基本的な考え方。ゲーミフィケーションの要素も盛り込まれており、参加した頻度でボーナスポイントを与える、獲得したコインの数でユーザーを格付けする――など、楽しみながら参加できるような機能が実装されている。

 従来の地域通貨は、地元経済の活性化のためにお金を循環させることを目的としていることが多く、参加した商店は値引き販売などを余儀なくされることも少なくない。まちのコインにもそうした狙いはあるにはあるが、それ以上に重視しているのはつながり。ソーシャルキャピタルを増大させる、地域外の人とのつながり強化する、交流を増やす、といったことが主目的である。

 カヤックは地域経済資本、地域環境資本、地域社会関係資本の3つの地域資本をバランス良く発展させることで地域全体を元気にしていく「鎌倉資本主義」を提唱している。この3つの地域資本を増やし、SDGsのような社会活動に自分のこととして取り組むために、「通貨」というツールを活用しようとしているのだ。

カヤックは人と人をつなげて地域の価値を高める取り組みを進めている

 独自通貨の世界では米フェイスブックが発表したデジタル通貨「リブラ」が世界的な注目を集めている。ただ、ローカルレベルでも独自の地域通貨、コミュニティー通貨を導入しようとする動きが相次いでいる。これまでのGDP(国内総生産)をベースにした考え方では、環境や人的つながりなど金銭価値に換算しにくいものは見落とされがち。「通貨」を活用することで、その部分を可視化、強化するという発想が根底にある。神奈川県とカヤックの取り組みもその一環である。今後、どのようにまちのコインの活用が進むか、興味深い。

■変更履歴
記事掲載当初、本文冒頭で「神奈川県は26日、SDGsの取り組みを実現するため」としていた部分を「ITサービスのカヤックは26日、神奈川県と、SDGsの取り組みを実現するため」に修正します。本文は修正済みです [2019/9/26 13:25]