3連休初日の9月21日、東京・渋谷の複合施設、渋谷マークシティ1階に人々が列をなしていた。子連れの夫婦や若い女性のグループなど30人ほどが並んでいる。列の先にあるのは「投票所」。順番に「候補者」の名前を用紙に記入し、投票箱に投函(とうかん)していく。

渋谷マークシティに設けられた投票所。きのこの山、たけのこの里をそれぞれ試食してから投票に臨む
渋谷マークシティに設けられた投票所。きのこの山、たけのこの里をそれぞれ試食してから投票に臨む

 ここは、明治が販売しているチョコレート菓子「きのこの山」と「たけのこの里」の人気度を測る「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙」の投票所だ。この総選挙は8月から12月まで実施。普段はツイッターなどのSNSや特設サイトで投票を受け付けているが、9月21~23日の3日間は実際に投票所を設けた。総選挙は2001年に一度実施されたものの、その時はハガキで投票する形式だった。現在のように消費者とSNSなどでコミュニケーションをとりながらの選挙は2018年から。投票所を設置したのは今年が初めてだ。

 投票所では、事前にインターネットで設置を知った人から通りがかりの人まで、3日間で約4000人が投票した。投票を終えた50代のパート従業員の女性は「普段からよく食べているが、投票したことでより親近感が湧いた。また買おうと思う」と話した。

 昨年の総選挙では2月から5カ月間にわたって投票を募り、たけのこの里が勝利した。最終的にはきのこの山と合わせて約1600万票を集めた。明治カカオマーケティング部カカオコンフェクショナリーグループの木原純氏は、「もともと消費者の間で『きのこの山とたけのこの里、どっちが好き』という議論があり、調べてみるとツイッターでは、こういった議論が毎日2000ツイートくらいあることが分かった。それを利用できないかと思ったのがきっかけ」と話す。テレビCMだけではなく、SNSも積極的に活用することで、消費者との接点を増やし、売り上げ増につなげる狙いだ。

 こうした宣伝手法を取る背景には、きのこの山、たけのこの里ともに発売から40年がたち、従来の方法では需要の喚起が難しかったことがある。木原氏も、両商品の売り上げは「正直厳しかった」と認める。「きのこの山やたけのこの里の記念日を設定してイベントを開催したこともあったが、単発で終わってしまっていた。テレビCMの15秒ではなかなか伝えられないこともある」(木原氏)。

 消費者と一緒に盛り上がることができる場を作り、継続して需要を喚起する取り組みとして始めたのが「選挙」だ。実際、前回の選挙を機に売り上げは伸び始め、18年9月から19年8月までの両商品の売上高は、前年同期比7%増となった。

 選挙を実施したことで社内外の商品とのコラボレーションも増えている。回転寿司チェーンのあきんどスシローとは今年の選挙に合わせて連携し、きのこの山やたけのこの里がのったパフェをスシローの店舗で販売した。さらに、明治のアイスクリーム「エッセルスーパーカップ」ともコラボして、エッセルスーパーカップのバニラ味を再現したきのこの山も販売している。

 明治は2009年に明治製菓と明治乳業が経営統合して誕生した。統合により売上高1兆円超の企業となったことで、利益率改善を経営の目標に据え、その過程で事業の選択と集中を進めてきた。チョコレートは「集中」する分野としており経営資源を投下しているが、食品でヒット商品を生むのは「1000に3つ」と言われるほど難しい。投票所を作り、発売から40年たった「きのこの山」や「たけのこの里」のブランドを維持しようとしているのは、定番となるヒット商品を生み出すことがいかに困難かの裏返しでもある。

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