米ニューヨークの国連本部で9月23日に開かれた「気候行動サミット」で、気候変動の各国の取り組みが「失敗したら我々は許さない」と警告したスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)。若者の代表として登壇した彼女の演説は世界の指導者たちに強い印象を残したが、日立製作所も例外ではなかった。

トゥンベリさんは演説で「未来はあなた方にかかっている」と各国首脳に迫った(写真:ユニフォトプレス)
トゥンベリさんは演説で「未来はあなた方にかかっている」と各国首脳に迫った(写真:ユニフォトプレス)

 「まったくもってその通り。(反論は)一言もございません」

 9月24日、日立が初めて開いたESG(環境・社会・企業統治)に関する説明会。環境に関する取り組みを説明した内藤理執行役常務はトゥンベリさんの演説についてこう触れ、地球環境問題が喫緊の課題であるとの認識を示した。

 日立はかねて温暖化対策に力を入れてきた企業として知られる。温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」が決まったことをきっかけに、2016年9月には環境関連の長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定た。50年度に二酸化炭素(CO2)の排出量を10年度比で80%削減し、水と資源の利用効率を同50%改善すると決めた。その長期目標に基づき、直近の行動計画として3年ごとの活動項目と目標を設定して活動している。

 日立における原材料の調達から生産、製品の利用、廃棄までのバリューチェーン全体を見ると、製品の利用段階で発生するCO2が全体の排出量の88.3%を占めるという。生産活動が占める割合は3.6%だ。21年度までの中期経営計画期間では、事業所における低炭素設備への投資促進や製品の低炭素化などを進め、10年度比20%超のCO2排出量削減を目指す。

 事業所における低炭素設備への投資促進のために、19年度投資分から「日立インターナルカーボンプライシング」制度を導入した。CO2排出量に1トン当たり5000円という仮想的な価格を設定し、排出量が少ない設備を購入する方向に誘導する。「予算の項目に入れたので実務レベルで強く意識するようになった」と内藤執行役常務は手応えを語る。

初めて開いたESG説明会には東原敏昭執行役社長兼CEO(最高経営責任者)も登壇
初めて開いたESG説明会には東原敏昭執行役社長兼CEO(最高経営責任者)も登壇

 地球環境問題に対する世界的な関心の高まりを背景に、企業は環境対策を進めやすい状況にある。投資家も企業のESGを重視するようになっている。社会的責任を果たす一環として企業が環境問題に取り組んでいた時代と異なり、今や環境対策は企業価値の向上にもつながる。

 日立がESG説明会を開いたのは、「(日立が定めた目標や計画が)これじゃ遅い、などと皆さんから指摘してもらうため」と内藤執行役常務は言う。投資家も巻き込みながら、温暖化をはじめとする環境問題に向き合い、企業価値を上げる思惑が透ける。

 海外の競合企業などに比べると株価が「割安」とされる日立。21年度までの中期経営計画の目標として「顧客企業と一緒に社会価値、環境価値、経済価値の3つを同時に向上させる」(東原敏昭執行役社長兼CEO)ことを掲げている。これら3つの価値を通じて、自社の企業価値をどう高めるか。初めて開いたESG説明会はその打開策になるだろうか。

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