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 アパレル大手のワールドは14日から、東京・北青山の自社ビルで若手ブランドを集めた「ポップアップ型百貨店 246stマーケット」を期間限定で開いた。SNS(交流サイト)や電子商取引(EC)サイトを活用して顧客と強いつながりを築いてきた若手ブランドに、一等地を売り場として貸し出す。

ワールドが東京・北青山の自社ビルに開いた「ポップアップ型百貨店 246stマーケット」

 青山通り(国道246号)沿いの一等地に立つワールド北青山ビル。ガラス張りの1階エントランスに、若手15ブランドが衣料品や雑貨、靴、指輪などを並べた。テーマは「サステナブル」。屏風型で折り畳める商品棚は低コストで運搬でき、木製で再利用もできる。

 2015年創業のオールユアーズは、プロスポーツのユニホームにも使われるポリエステル素材で作ったセットアップを販売した。洗濯機で洗えて、手入れが容易。服を数年かけて着続けたいという層に受け入れられているという。

 同社の中込勇斗氏は「従来、ファッション業界で重視されてきたトレンドでなく、サステナブルというテーマに共感した。注目される若手ブランドのユーザーと接点を持てるのもありがたい」と話す。

 今回集まったのは「D2C(Direct to Consumer)」と呼ばれるビジネスモデルで注目されているブランドが中心。製造から販売まで自社で手掛け、インターネットなどを通じて顧客と直接つながり、商品作りやマーケティングに生かす。

 1990年代に15兆円を超えたアパレル業界の市場規模は10兆円を割り込む。ワールドやTSIホールディングス、三陽商会など大手アパレルは不採算ブランドの整理を進め、ブランド数は減少傾向にある。大手が試行錯誤する中で、小規模ながら特定の顧客層を深掘りしてファンを生み出すD2Cの存在感は高まっている。

 こうした若手ブランドに目を付けたワールドが模索するのが、成長途上のブランドに生産や販売面のノウハウを提供するプラットフォーマー事業だ。今回のポップアップ百貨店の会場の真下、ワールド北青山ビルの地下1階には工業用ミシンや大型アイロンを備えた作業場を新設。有望な若手クリエーターに貸し出す事業を始める。ワールドのパターンナーも同じ場所で作業をして、「互いに刺激し合うことも期待している」(ワールド広報担当者)という。

ワールド北青山ビルの地下1階には若手クリエーターなどが利用できる作業場を設けた

 若手ブランドに期待をかけるのは大手アパレルメーカーだけではない。衣料品を中心に販売する商業施設側も同様だ。百貨店やショッピングセンターなど商業施設の運営側は施設の「金太郎あめ化」に苦悩している。新しい施設をつくっても、入居するテナントがどうしても近隣施設と似通ってしまう。ワールドの森岡聡子プラットフォーム事業推進室副室長は「(商業施設を運営する)デベロッパーから、自分の施設でもポップアップストアを開いてくれないかという声が多く届いている」と明かす。

 日本の百貨店や商業施設では、数年単位で契約し、入居ブランドはベース賃料と売り上げに応じて増える賃料を払うのが一般的だ。一方、海外では大型ブランドが撤退して空いたスペースにプラットフォーマーが入り、若手ブランドに売り場の広さやラック単位で、期間限定で貸し出すモデルが増えているという。ワールドの今回のポップアップ百貨店も、商業施設での展開を見据えて開催されたものだ。

 商業施設デベロッパーの実入りは少なくなりがちだが、「デベロッパー側からすると、勢いのある若手ブランドの固定客が来店してくれるメリットの方が断然大きい」(ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓氏)。実際、百貨店やセレクトショップ向けの展示会が、D2Cのファン層である一般消費者が参加できるイベント型へ衣替えするケースも出始めているという。

 ワールドの上山健二社長は「若手クリエーターが自然と集まるコミュニティースペースを作りたい。うちの人間も刺激を受けて、もっととがってくれると大きく期待している」と語る。同社の取り組みは、ファッション業界の新たなエコシステム(生態系)づくりの第一歩となるだろうか。

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