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 20日に日本で開幕したラグビーのワールドカップ(W杯)。各チームに協賛する企業も選手とともに戦いを繰り広げている。中でも選手たちが着用し、多くのファンの目に留まるジャージーは競争が激しい。

 「ラグビーW杯は世界で40億人が視聴するとされる。ブランド認知度を高める上で非常に大きなチャンスだ」。今大会の優勝候補の2チーム、オーストラリアと南アフリカのジャージーを提供するアシックスの関係者はそう語る。

オーストラリア代表チームはアシックスのジャージーを使用している(写真:アフロ)

 アシックスは2014年から両チームと契約している。15年のW杯では4強に両チームが残った。ともに南半球のチームだが、ラグビー人気の高い欧州でのPR効果も期待できるという。

 もっとも、今大会のジャージー供給チーム数では「カンタベリー」が圧倒している。1904年にニュージーランドで創業したブランドで、1924年にニュージーランド代表「オールブラックス」にジャージーを提供して以来、ラグビー衣料の中心的なブランドとなった。

 今大会、カンタベリーのジャージーを採用しているのは20チーム中7チームで、日本代表も含まれる。国際組織のワールドラグビー(WR)とも提携しており、大会のボランティアなど約1万5000人のスタッフ向けの衣服も提供する。

 「ラグビー=カンタベリー」とも言えるブランドだが、その構図は一度、崩れている。2000年前後に、スポーツ大手の米ナイキや独アディダスがラグビーに本格参戦し、各国にジャージーを提供するようになったからだ。この時に広がったのが、今では一般的になった体にフィットする「ピタピタ」ジャージーだ。

 当初のピタピタジャージーは悲惨だった。相手につかまれにくい利点はあるが、薄くて耐久性がなかったため、すぐに破れるのだ。ゲーム後半になると、選手の体がむき出しになることもしばしばだった。ただ、このジャージーはラグビーの質を変えたとされる。

 日本ラグビーの一時代を築いた故平尾誠二氏はこう語っていた。「体のラインが明らかに出るから、選手は体を鍛えるようになった。そうなると、15人全員が走れるアスリートになった。狭くなったスペースを破るため、チームはより組織的になっていった」

 ピタピタジャージーでは「襟問題」も勃発した。つかまれる部分を極力なくしたいという選手の思いをメーカーが取り込み、襟をなくしてTシャツのようにしたのだ。これに対し、WRの前身の国際ラグビーボードは激怒。その後、襟の長さを指定する新たな規定ができた。

 なぜ、ラグビーは襟にこだわったのか。それは、ラグビーが「紳士のスポーツ」だからだ。試合が終わると敵味方が交じり合ってエールを交換するのがラグビーの伝統。「ノーサイドの精神」だ。

 この時、相手に失礼になってはいけないということで、最初はジャケットを着ようとした。あまりにも暑いのでジャケットはあきらめたものの、せめてネクタイをしようということになった。ネクタイをするには襟がいる。こうして、ラグビーのジャージーには襟が付き物になったようだが、今大会ではほぼなくなっているチームもある。

 ラグビー界の「伝統」を揺さぶった大手スポーツメーカーだが、ナイキが今大会、提供するのはアルゼンチンだけ。「彼らは参入するのも派手だが引くのも派手だ」とあるスポーツメーカー社員は話す。復権したカンタベリーの関係者は「我々のサポート力が評価されている」と胸を張る。

 各社による強豪チームの奪い合いを横目に、今大会、ひっそりと参戦したのがミズノだ。提供するのはトンガとナミビアだが、本来であればもう1チーム加わり、3チームへの提供となるはずだった。欧州予選を勝ち抜いて出場を決めたルーマニアだ。しかし、同国はその後、選手の代表資格に問題があったとして出場取り消しの処分を受けた。

 ルーマニアの代わりに出場することになったのがロシア。取り消しがなければ、ルーマニアは世界にテレビ放送される開幕戦で日本と戦っていたはずだった。ミズノからすると「大魚を逃した気分」(関係者)だが、大会はまだ始まったばかり。提供チームが旋風を起こせば、好機はまた巡ってくる。

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