
物流スタートアップのHacobu(ハコブ、東京・港)は9月19日、大和ハウス工業、オフィス通販大手のアスクル、三井不動産らと組み新たな物流のプラットフォーム「シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム」を構築すると発表した。同日、都内で開いた記者会見で、ハコブの佐々木太郎社長は「物流は非効率なところが多く指摘されている。モノの移動に関し社会コストを下げていきたい」と強調した。
今回のプラットフォームには国内のあらゆる物流情報を収集し、データを活用する考えだ。2023年をめどに完成を目指している。
例えば倉庫内にどういった商品が、いつ、何キログラム運ばれたのかといった情報や、特定のエリアを走るトラックが何台いるのかなどを可視化する。結果、年末年始などの荷物が集まりやすい時期に配送料金を高く設定するなど値段を柔軟に変更したり、業種の垣根を越えて共同配送ができたりする。最終的には自動運転トラックで配送するための情報基盤としても活用したい考えだ。
このプラットフォームで中心的な役割を担うハコブは15年設立のスタートアップ企業。既にアスクルやソニー系のソニーイノベーションファンド、日本郵政キャピタルなどが出資している。今年9月には三井不動産に加え、トラックメーカーの日野自動車との資本業務提携を決めるなど、物流に関わる大手企業が相次いで提携や協業に動いている。
ハコブの中核サービスは、荷主や配送業者、トラックのドライバーなどに固有のIDを設定し、ひもづけるというもの。IDを活用することでトラックドライバーが倉庫内のスペースを予約したり、配送業者がトラックのリアルタイムの位置情報を確認したりといったサービスを利用できるようにしている。
ほかのサービスに例えるならLINEだ。一度アカウントを作れば口コミで友達や知り合いに利用者が広がり、幅広いサービスが使えるようになる。ハコブのIDは配送事業者だけでなくメーカーやインターネット通販など幅広い業種の企業が利用する。「特定の宅配業者がやるのではなく、中立的な立場だからこそプラットフォームになれた」と佐々木社長は言う。
政府もAI(人工知能)などを使った「スマート物流サービス」の構築を急いでいるが、各企業とのデータ連携などが遅れている部分があり、うまくいっているとは言い難い。政府側からのアプローチもあり、「政府との連携も視野に入れている」(佐々木社長)という。
海外では物流分野のスタートアップに多額の資金が集まっており、企業価値が10億ドルを突破したユニコーン企業も出てきた。日本では物流がドライバー不足や宅配危機など社会課題と直結するだけに、今回のハコブらがつくるプラットフォームの実現によって解決できる物流の問題は少なくない。
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