米クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長が9月19日に都内で記者会見を開いた。NTTドコモが同20日に始める5G(第5世代移動通信システム)の試験サービスに合わせて来日したアモン社長は、「5Gサービスを立ち上げた事業者はすべてクアルコムのチップを使った端末を採用している」などと語り、5Gの広がりに合わせて事業を拡大する自信を示した。

都内で会見する米クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長
都内で会見する米クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長

 クアルコムには逆風が吹いている。今年5月には顧客企業とのライセンス契約をめぐって米連邦地裁が独占禁止法違反と判断し、ライセンス契約の見直しを指示した。今後の裁判の行方次第では見直しを義務付けられる可能性がある。さらに、米トランプ政権が決めた中国・華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置の影響で、中国のスマホメーカーへの半導体の販売が減少。19年7~9月期の売上高は前年同期比12~26%減を見込んでいる。

 それでもアモン社長が先行きに自信を見せるのは、各国で立ち上がる5Gサービスの事業者がすべてクアルコムの通信用半導体を搭載した端末を採用しているからだ。ドコモのサービスに対応するソニーモバイル、サムスン電子、LGエレクトロニクスのスマホ3機種と、シャープのルーターもクアルコムの通信半導体を使う。

 「世界で発売済みや開発中の5G対応端末でクアルコムのチップを採用するのは150機種以上だ」(アモン社長)。ファーウェイやサムスン電子なども5Gの通信半導体を手掛けており、今後は競争の激化が予想される。これに対しアモン社長は「普及価格帯のチップの提供や、先進技術へのいち早い対応で競争力を維持していく」と話した。

 さらに、ここ数年失っていた米アップル向けの販売が回復する見込みも明るい要素だ。知的財産権をめぐる訴訟で和解して複数年の契約を結んだことで、iPhoneへのクアルコム製半導体の搭載も期待できる。「我々のチップで5Gに対応した機種がアップルから出てくることを楽しみにしている」とアモン社長は述べた。

 「5Gはモバイル分野だけでなく、自動車や街などあらゆる産業を変革する基盤技術だ」とアモン社長は話す。16日に17年設立のTDKとの合弁会社、RF360ホールディングスシンガポールの全株式を取得したと発表するなど、クアルコムは5G通信のデジタル処理チップから、無線の電波を送受信する「RFフロントエンド」までを一貫して提供できる体制を整えた。5Gを使う用途の広がりと、1台1台が採用する部品の広がり。自らの陣地を面的に広げる戦略で逆風に立ち向かう。

■変更履歴
掲載当初、「5G対応端末のすべてがクアルコムの通信用半導体を採用している」としていましたが、「5Gサービスを開始した事業者すべてがクアルコムの通信用半導体を搭載した端末を採用している」の誤りでした。本文は訂正済みです。 [2019/09/20 10:30]

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。