国土交通省が19日に発表した今年7月1日時点の基準地価は、全国の住宅・商業・工業の全用途平均が2年連続で上昇した。上昇率は0.1%から0.4%に拡大。3大都市圏(東京・大阪・名古屋)以外の地方圏でも商業地が28年ぶりに上昇に転じるなど、地価上昇の勢いは全国に広がりつつある。
前年からの上昇率が全国トップだったのは、昨年に引き続きスキーリゾートのニセコ観光圏の一角を占める北海道倶知安町だった。パークハイアットやザ・リッツ・カールトンといった五つ星ホテルブランドが進出を決めるなど、外資系資本による不動産投資が一層過熱。上昇率は前回よりも拡大し、住宅地と商業地ともに66.7%と驚異的な伸びを見せている。
そのほか住宅地では、日本で唯一人口の自然増が続いている沖縄県内の地点が多くランクイン。そんな中で上昇率で6位につけたのが名古屋市中区だ。

クルマ社会の名古屋都市圏では従来、駐車場2台分を確保した郊外の戸建てが人気だったが、「職住近接」ニーズの高まりや、高齢者の住み替え需要もあって、都心回帰の流れが鮮明になっている。2027年のリニア中央新幹線の開業もにらみ、野村不動産や積水ハウス、住友不動産といった県外企業の参入が相次いでいる。
都心回帰の流れは全国共通のものになりつつある。地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)では、市中心部の駅近物件への需要にけん引されて、住宅地の伸び率が前年より拡大。長崎市で22年ぶりに住宅地が上昇に転じるなど、中核都市以外でも同様の傾向が見られる。
都市の中心部がにぎわいを取り戻すのと引き換えに、郊外の住宅地では空洞化が進む。神戸市が20年7月から市中心部でのタワーマンションの新設規制に乗り出すなど、自治体の間でも危機感は高まりつつある。
ただ、共働き世帯や、車の運転に不安を感じる高齢世帯の増加を背景にした都心回帰の流れは強い。郊外への人口誘導が奏功するかは未知数だ。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?