アマゾンジャパンは9月19日、商品の受け取りに関する新サービス「Amazon Hub(アマゾン ハブ)」を開始した。アマゾン利用者は購入時の配送先として、「Amazon Hub ロッカー」または「Amazon Hub カウンター」を指定できる。

前者の場合はコンビニエンスストアのファミリーマートや神奈川県を中心に店舗を持つ富士シティオのスーパー「フジ」、小田急電鉄の駅などに設置された青いロッカーに商品が届き、利用者が自分で取り出す。
後者の場合は、もみほぐしサービスの「りらくる」や荷物預かりサービス「ecbo」加盟店で店舗スタッフから荷物を受け取る。東京都と神奈川県を中心に国内200カ所から開始し、来年以降、順次全国に広げるという。ロッカーの設置費やメンテナンス費はアマゾンジャパンが負担する。
これまでもアマゾンで買った商品はコンビニなどでの「店頭受取」を指定することができた。店頭受取は利用者にとって都合がいい時間に荷物を受け取ることができて便利な半面、対応するコンビニなどの店員にとっては大きな負担だった。
ファミリーマートの澤田貴司社長は9月18日の会見で、「店舗での荷物の取り扱いは年間約1200万個だが、アマゾンの荷物がその8割を占める。多い店では1日に40~50個を扱うケースもある」と話した。Amazon Hub ロッカーの設置は人手不足に苦しむコンビニ加盟店への支援策という側面もある。さらにスーパーや鉄道駅などにAmazon Hubが浸透すれば、従来はコンビニに集中していた荷物受け渡しの業務負荷を分散できる。
ただ、荷物と一緒に顧客もコンビニから流出する可能性はある。店舗内外に余裕のある郊外のコンビニ店舗はともかく、都市部の店舗ではロッカー自体の置き場所も問題となる。ロッカー設置のために既存の設備や商品陳列棚を減らさなければならないケースも考えられる。
ファミリーマート本社と同じビルにある「ファミリーマート ムスブ田町店」を訪問すると、レジから離れた店内の一角にAmazon Hub ロッカーが設置されていた。サイズは幅が約1.8m、高さ約2.1m、奥行きは0.6mほどだ。18日の発表会見で披露された幅5m弱のロッカーと比較するとかなり小さい。アマゾンジャパンのジェフ・ハヤシダ社長は「当面はこのサイズ(幅5m弱のタイプ)で広げつつ、サイズ展開は今後検討する」と話したが、狭いコンビニに収めるための工夫はすでに講じられているようだ。

ファミリーマート ムスブ田町店でロッカーが設置されたのは、もともとイートインスペースだった場所だ。同店ではロッカーと引き換えに商品の陳列棚が犠牲になることはなかったが、多くの店では様々なレイアウトの工夫が求められそうだ。ファミリーマートによれば、店舗ごとの事情に合わせて屋内外を問わず設置場所を検討するという。
実際に同店を受取場所に指定してアマゾンで商品を購入し、ロッカーから商品を取り出してみた。事前にメールで届いていたバーコードをロッカーの読み取り部にかざすと自動的にドアが開き、ほんの数秒で受け取ることができた。
コンビニでのアマゾン荷物の取り扱いはレジ業務の負荷を高めるだけでなく、バックヤードの空間を圧迫して作業効率を下げる要因にもなっていた。仮に既存の棚やイートインスペースの縮小を余儀なくされるとしても、その分、作業効率や売上効率を上げられるのであれば、アマゾンの資本力も相まって全国のコンビニに一気に拡大する可能性がある。ファミリーマートでの「実証実験」に業界の内外から注目が集まっている。
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