「私がCEO(最高経営責任者)に就任した際に決めた経営の方向性は『人に近づく』だが、研究開発(R&D)でも人に近づくことを目指している」。ソニーの吉田憲一郎社長兼CEOは、将来の実用化を見据えた技術展示会の冒頭、こう意気込んだ。

ソニーは9月18日、報道陣やアナリストなど社外にR&Dの成果を披露する技術展示会「Sony Technology Day(ソニーテクノロジーデイ)」を開催した。ソニーが「アドバンテージがある領域」(R&D担当の勝本徹専務)として、注力する最新技術を披露した。
報道陣など社外に向けて技術展示会を開くのは、「2000年初頭くらいに1度やって以来」(勝本専務)という。今回、技術展示会の開催に踏み切った理由として、勝本専務は「経営とテクノロジーの方向性が一致していることを示すため」「コンテンツがデジタル化し、手掛ける多くの事業で共通の技術が活用できるようになったため」、そして「他社とのコラボレーションや優秀な人材確保に向けてアピールするため」の3つを上げた。
ソニーは前日の9月17日、米ファンドのサード・ポイントが求めていた半導体事業の分離・上場を拒否すると発表したばかり。テクノロジーを横展開することで、コングロマリット・ディスカウントを解消し、企業価値を高めていく考えだ。
「つなぐ」「解き放つ」「超える」がキーワード
18日に披露したのは、「つなぐ」「解き放つ」「超える」をキーワードにした、人の想像力や能力を高める11分野の技術展示だ。

人の能力を「超える」の技術として展示したのは、吉田社長が「技術のコア」と位置付けるイメージング関連。暗所でも撮影できる車載用イメージセンサーに加えて、センサーとレーダーを組み合わせて悪天候でも車を検知する技術や、人の目で見えない「偏光」を可視化し、表面の微細なキズなどを検出できる技術などを披露した。
クリエーターの想像力を「解き放つ」技術としては、物質への光の映り方を40個のGPU(画像処理装置)を使って計算して実写に近いCG(コンピュータグラフィック)を作成する技術などを展示。人と人を「つなぐ」技術では演奏者の位置情報を付与した音源を使い、ヘッドホンで360度の方向からの音を楽しめる技術などを披露した。
披露した技術は「すべて人に近づき、人と人をつなぐ技術」と勝本専務は説明。さらに「(処理などの)リアルタイム性にはこだわっている」と続けた。
吉田社長は2018年4月の経営トップ就任当初、「やや仕込み不足だった」として、次世代技術の開発を強化する方針を示してきた。今回、最新技術を対外的にアピールできたことは、勝負していく領域が定まったうえで技術の「仕込み」が順調に進んでいる自信の表れかもしれない。
掲載当初「6分の1スケール」としておりましたが、「16分の1スケール」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2019/9/19 14:15]
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