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 教育系スタートアップのスタディプラス(東京・千代田)と参考書を手掛ける出版社12社は9月17日、大学受験向け参考書の内容をスマートフォンアプリを通じて学べるサブスクリプション(定額課金)サービス「ポルト」を始める。当初、収録する参考書は5教科30冊で、来夏に100冊を目指す。月額980円(税抜き)で使い放題という料金設定は、リクルートの動画学習アプリ「スタディサプリ」と同じ。教育産業は安定した需要が見込めるが、スマホを通じて勉強するスタイルが定着する中で顧客争奪戦が激しさを増している。

スタディプラスと出版社12社が始めるアプリ「ポルト」には当初30冊の参考書が収録される

 ポルトに参加する出版社は教学社やアルク、講談社など。「英単語ターゲット1900」(旺文社)や「フォーカス ゴールド」(啓林館、分野は数学)、「山川 一問一答世界史」(山川出版社)などの参考書が収録される。単に参考書を表示するだけではなく、参考書に掲載された問題が1画面に表れ、タップすると解答が出たり、参考書ごとに正答率や進捗率が分かるようにしたりと、スマートフォンに最適化した。

 出版社12社と組むスタディプラスは、勉強時間などにコメントを添えて学習の進捗を記録できる同名のスマホアプリを展開している。利用者数は累計400万人に上り、大学進学希望者の高校生の3人に1人が使っているという。学習の進捗管理に参考書の利用状況などを組み合わせれば、利便性が格段に高まるとの考えだ。補助教材として参考書を採用している学校に対してもアプリを売り込む計画もある。

 12社が結束した背景には、デジタル化の進展で将来的に参考書が利用されなくなるのではとの危機感がある。

 少子化は進んでいるものの、近年、高校生1人当たりの教育費は増え続けている。そんな中、広がってきたのがスマホを使った学習だ。リクルートのスタディサプリは有名予備校の教師による動画授業を配信し、「高額の月謝を払って予備校に通う層と、教育費をかけずに自主学習する層の間をついて、塾に行くほどではないが、独学に不安を感じるという新たな層を開拓した」(ポルトに参加する出版社)。

 現時点では、塾通いと参考書などを使った自主学習、スマホを使った学習はある程度、補完し合っているとみられている。繰り返しの練習に向くスマホで学習の定着度を高めながら、知識を派生させ広げていく場合には参考書を使うといった具合だ。また学校や教師によってはスマホを使った学習が許されない場合もあり、紙の参考書が今すぐなくなるという事態は想定しづらい。

 しかし、ポルトに参加する出版社の担当者は「いずれは1人当たりの学習費の上昇にも限界が訪れ、教育界に地殻変動が起きるかもしれない」と危機感を募らせる。実際、英語辞書では既にスマホアプリが存在感を高めている。

スマホを使って勉強するスタイルが当たり前になっている

 ポルトは開始時点で「自学自習が得意なやる気がある受験生」(スタディプラス担当者)を中心に20万人の登録を目指す。さらに社会人の学び直し需要も見据えており、今後、スタディサプリとの競合が激しくなる可能性もある。

 教育産業に詳しい日本総合研究所の手塚貞治プリンシパルは「勝敗のカギはコンテンツの質」とみる。合格を最終目標とする教育は、安さと効率の良さだけが決め手になるとは限らない。手塚氏は「コンテンツに加え、従来塾に求められていた子供のやる気を高める効果を発揮できるかも重要だ」と指摘する。

 数学の参考書「フォーカス ゴールド」をポルトに提供する啓林館の担当者は「スマホアプリなら正答率や挫折するポイントを把握し、コンテンツの向上につなげられる。これまでユーザーの支持を得てきたという手応えがあって参加した」と力を込める。長く参考書を作ってきたノウハウをスマホアプリに生かせるかがカギになりそうだ。

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