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 だが、国産のホップ栽培は“絶滅”の危機にひんしている。国産のソラチエースは試験栽培レベルの数量にとどまる。国産ホップの生産量は、08年の446トンから18年には202トンへと、10年で半分以下に激減した。

 高齢化や農業の担い手不足により、多くの人手を要するホップの栽培を継続するのが困難になっているのだ。例えば収穫作業は、トラクターとトラックを使い、近隣農家が協力して5~6人がかりで行う。一方、ホップ先進国のドイツでは、専用の装置を装備した大型トラクターで収穫するため、作業者は1人。生産性は日本のおよそ10倍に達する。個性的な国産ホップを守り、育てるためには、ホップ生産の高度化が急務だ。

 国産ホップの約7割を調達するキリンビールは、主力商品「一番搾り」の期間限定商品に自社開発のホップ「IBUKI」を使用しており、国内有数の産地、岩手県遠野市でホップを栽培する農業生産法人、BEER EXPERIENCE(18年設立)に出資し、ホップ生産の機械化や大規模化を支援している。

 昭和から平成を経て令和へと時代は移り、ビール市場においても、消費者はより多様で個性的な商品に目を向けるようになった。大量生産型のメガブランドが逆風にあえぐ中、ワインのように原料の品種や産地、作り手の思いといった「ストーリー」を持つクラフトビールが売れるようになっている。それは、ビール本来の嗜好品としての価値を消費者が求めていることの証左でもある。

 かつては原料の1つとしてしか認知されていなかったホップを前面に押し出したマーケティングを、ライバル同士が手を携えて展開したことは、こうした時代の変化を映している。

ホップの国内有数の産地、岩手県遠野市でのホップの収穫作業。多くの人手を要する。
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