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(写真:AP/アフロ)

 9日、関東を通過した大型の台風15号の影響で、始発からの運行を早くから断念した鉄道会社が多数出た。

 小田急電鉄、京急電鉄などは始発から運転見合わせを発表。JR東日本は午前8時ごろに運行再開予定としていたが、一部の路線で再開のめどを何度も繰り下げるなどしたため、再開を見込んで集まった多くの乗客が待たされるはめになった。

 早い段階で運転が再開された路線でも混乱が発生した。例えば今回、東急東横線は午前8時10分には運転を再開したが、神奈川県横浜市の綱島駅では入場規制を実施。午前10時を過ぎても、駅に入れない乗客の列が、商店街にまで伸びていたという。

 なぜ通勤ラッシュを超えるような混雑が生まれたのか。

 JR東日本は「『運転再開』の時点で、車庫から出て始発駅から順に走っていくというイメージ。途中駅で乗ろうとしても既に満員で乗り込めないという状況もあり得る」と説明する。通常、早朝など需要の小さな時間帯に車庫から少しずつ線路上に車両を出してラッシュ時に必要な輸送能力を確保するが、今回のケースでは、輸送能力を増強しているさなかに大勢の乗客が殺到してしまった。東京都港区に勤める男性は、「なんとかホームには入れたが、電車の本数が少ない。来たとしても満員で乗ることすらできない。諦めてリモートワークに切り替えた」と話す。

 では、こうした混乱をどのように避ければよいのか。

 まず、誰もが思いつくのは、鉄道各社の提供する情報を確認することだろう。各社とも、アプリやホームページなどを通じて運行状況をリアルタイムで伝える取り組みは進んでいる。「西武線アプリ」「東京メトロアプリ」など、首都圏の鉄道各社が用意するアプリでは、運行情報や現在走っている列車の走行位置、到着時間の予測などを見ることができるようになっている。鉄道会社間の連携も進み、相互乗り入れをする別路線の情報なども、シームレスに表示することが可能だ。運転が再開したかどうか、どの程度の頻度で運行しているかはこれで調べられる。

「西武線アプリ」の画面

 運行の有無だけでなく、混雑の程度まで可視化しようという試みも始まっている。東急電鉄は、16年10月から「駅視-vision」というサービスを運営。アプリ上で、駅構内の状況や入場規制情報などをリアルタイムで確認することができるものだ。JR東日本アプリでは、山手線など一部の列車について混雑率を参照することができる。

 ただし、非常時にこれらのサービスが正しく稼働しているとは限らない。駅視-visionでは今回、入場規制や駅の様子が正しくアプリに反映されていなかった。「入場規制は各駅の係員が改札口前で判断するなど、現場に任せている。一斉に連絡というのが難しい場面もあり、情報共有に差ができてしまった」(東急電鉄)と話す。東京メトロのサイトは、アクセスが集中してつながりにくくなった。

東急電鉄の「駅視vision」(左)と、JR東日本アプリが提供する混雑率

 では頼れる情報源はないのか。今回も、ツイッターなどでは、駅の並び列の様子を写真付きで投稿したり、混雑の様子をつぶやいたりするユーザーが多く見られた。現状では、SNSの情報を活用することが、鉄道運行の混乱について状況をリアルタイムに把握する最も有効な手段になっているのが現実だ。

 鉄道駅での入場規制やアナウンスなどのオペレーションは、駅舎の構造による収容人数や乗降客数などが駅ごとに異なるため、現場に委ねられていることが多い。だから「(現地の情報を)事前に乗客に共有する仕組みなどは、整備されていない」(東京メトロ)というのが一般的だろう。だが、「行かないと分からない」はいかにも不便だ。公共空間や公共交通機関にセンサーを設けて、ヒトの動きを検知し、個人情報に配慮して公開していくなど、打つ手は様々考えられる。

 関東圏で9日の午前に満員電車にすし詰めになった人や、駅にも入れずに炎天下で列をなした人たちのため息の総量と、その人たちのモチベーションや体力の減退を思うと、その非効率の「負の経済効果」たるやそれなりの投資に値すると思わずにはいられない。

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