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 例えばロイバントが現在46%の株式を保有しており、ニューヨーク株式市場に上場しているミオバント・サイエンシズは、16年6月に武田薬品工業と共に設立したベンチャーで、武田薬品が創出した子宮筋腫治療薬のレルゴリックスの日本とアジアの一部を除く権利と、それとは別の婦人科向けの候補品の権利を受けて開発を進めてきた。ミオバントの社長兼CEOには、アステラス製薬が販売している年商3000億円超の前立腺がん治療薬イクスタンジの開発を率いた医師が就任している。

 製薬企業には、科学的な理由ではなく、他の開発品との優先順位の関係や、自社の重点領域外であるなど戦略的な理由で開発が中断されているような候補化合物が実は多数ある。そうした、棚ざらしになっている候補化合物に着目して権利を確保し、領域ごとに子会社を設立し、そのトップには業界での経験豊富な経営者を招いて開発を進めるというのがロイバントのビジネスモデルだ。若手の経営者として注目され、米フォーブス誌の表紙を飾ったこともあるラマスワミーCEOは同誌のインタビューの中で、「社会の役に立つはずの多くの薬が、その真価とは無関係の理由で打ち捨てられている」と語っている。

 このビジネスモデルは製薬企業にとっても渡りに船だったのだろう。創業5年目にして、ロイバントの子会社で手掛けている候補化合物は14領域45品目と、驚異的な数に達している。しかも臨床試験の最終段階である「フェーズIII」が7品目、その手前の「フェーズII」が12品目と、開発後期の品目も数多い。同社は17年にソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから11億ドルを調達しており、この潤沢な資金が候補品の権利の確保を後押ししたのだろうが、目利き力や交渉力にたけているのも間違いない。

 大日本住友製薬は今回の提携で株式を取得するミオバントのレルゴリックスと、ウロバント・サイエンシズのビベグロンという2つの品目について、「それぞれ10億ドルを超えるポテンシャルを持っている」(野村博社長)と説明。19年に米国で申請を予定しているこの2品目が手に入る利点を強調した。ただし、両剤とも米国には競合品がある他、レルゴリックスは武田薬品、ビベグロンは米メルクから権利を導入しているためロイヤルティーなどの支払いが発生する可能性もあり、最終的に大日本住友製薬にどれだけの収益をもたらすのかは分からない。

 ただ、今回の提携を通じて大日本住友製薬はロイバントの創薬やヘルスケアIT(情報技術)のプラットフォーム技術にもアクセスできるようになる。ロイバントは創薬目的の子会社を設立するだけでなく、ヘルスケア関連のデータを収集するデータバント、医療ビッグデータなどを利用して医療の効率化を目指すアリバントといった子会社も設立してヘルスケアIT事業も強化している。提携によりロイバントの目利きのノウハウを手に入れたり、ヘルスケアIT関連の技術や人材を獲得できたりすれば、そのメリットは大きいだろう。それこそが、大日本住友製薬が30億ドルの資金を投じる真の狙いなのかもしれない。

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