自分そっくりのアンドロイドを開発するなど、異色のロボット研究者として知られる石黒浩・大阪大学教授が会社経営者になった。9月7日、「アバター(分身)」を社会に実装する大学発ベンチャー「AVITA(アビータ)」を設立したと発表。石黒氏は代表取締役CEO(最高経営責任者)としてアバターの普及に取り組む。

自分そっくりのアンドロイドの身だしなみを整える石黒浩教授(写真:大阪大学)
自分そっくりのアンドロイドの身だしなみを整える石黒浩教授(写真:大阪大学)

 アバターはロボットやCG(コンピューター・グラフィックス)の形態を取る。販売接客、診療、心理カウンセリングなど様々な場面で、アバターを遠隔から操作できるサービスの提供を目指す。操縦者は自宅にいながら、店舗や病院にやってきた顧客や患者などとロボットのアバターを介してやり取りできる。オンライン販売やオンライン診療などの場合は、CGのアバターを操作する。

 新会社には大阪ガスとサイバーエージェント、塩野義製薬、凸版印刷、フジキンの5社が合計5億2000万円出資した。特殊バルブメーカーのフジキンは遠隔医療システムにも参入しており、入院患者の孤独を解消するロボットのアバターの提供を目指す。入院患者の親族が自宅からアバターを操作して、見舞うといった使い方を想定する。大阪ガスは契約者とやり取りする手段として、従来の電話窓口に加えてCGのアバターを追加することを検討している。

 石黒氏は「コロナ禍で多くの人がリモートワークに慣れた。今こそアバターを世の中に出して、社会を変えていける」と発言。「時代が追いついてきた」との手応えを感じているようだ。

 社名のアビータはラテン語やイタリア語で生命を意味する「ビータ」と、アバターを組み合わせた造語である。石黒氏は、「(生身の)人間だけが人間ではなく、ロボットでもCGでも人間と関係性を築けるものを、生きているものとして受け入れる未来が来るだろう」と、社名に込めた願いを解説する。ロボットに生命を宿すことが可能だと石黒氏が考えていることは、「石黒浩・阪大教授の超進化論『生身を捨てれば人は1万年生きる』」でも報じた通りだ。ロボットにも生命が宿っていると見なせば、自分自身をアバターとして様々な場所に存在させられる。

 「アバターで人を身体、脳、空間、時間の制約から解放する」とした石黒氏の言葉は、比喩ではない。新会社で生命の定義を覆そうとしているのかもしれない。

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